マーコフスキー氏はオピニオンの最後を、古代共和制ローマの政治家、大カトー(BC234~BC149)が地中海の向こう側の強国カルタゴを指して常に訴え続けた言葉「カルタゴ滅ぶべし」をもじって「中国滅ぶべし」だ、と結ぶ。
こうしたオピニオンは、トランプ支持者の心理をかなり代弁していると見てよいだろう。また、この3月末に発足した対中国強硬派の民間政策集団「現在の危機に関する委員会:中国(CPDC)」の路線とも一致する。「現在の危機に関する委員会(CPD)」は冷戦期に2度形成され、対ソ連(現ロシア)強硬策を主導した。新しく中国を標的に形成されたCPDCは、その「指針」で共産党が支配する中国と「共存はありえない」と宣言している。まさに「滅ぶべし」だ(詳しくは、東洋経済Plus「タカ派が警告する新冷戦」参照)。
トランプ派メディアにも懸念の声
とは言っても、新たな対中関税引き上げ措置が発表され、一時的にせよ株価が大幅に急落したりするとトランプ支持者の間でも不安は募る。トランプ大統領は「関税を払うのはアメリカの消費者ではない」とツイッターで火消しに努めたが、トランプ派メディアの中からさえ反論が出ている。
保守系紙『ワシントン・エグザミナー』は5月16日付の社説「関税を払うのはあなた方みなさんだ」で、トランプのごまかしを突いている。中国からの輸入製品に課された関税は、販売価格に上乗せされるだけでない。中国が報復としてアメリカの農産物に課す関税も、回り回ってアメリカの消費者が払う。つまり、トランプ政権が打ち出す農家救済のための85億ドルに及ぶ補助金は、結局はアメリカ国民が払う税金だというわけだ。
やはり保守系で、基本的にトランプ支持派である『ワシントン・タイムズ』紙も16日付で保守系コラムニストの分析「関税の問題点」を掲載した。中国と関税引き上げ合戦のような様相になったことで、「好景気と株価上昇の波に乗って来年の大統領再選を勝ち取ろうというトランプ大統領の計画は深刻な問題に直面している」と警鐘を鳴らしている。
トランプがなんと言おうと、関税はアメリカの中国製品輸入業者と消費者が払うことになるのは、側近のクドロー国家経済会議委員長も保守系ケーブルテレビFOXのニュース番組で認めている。その事実を挙げて、トランプの対中国交渉能力にも疑問を呈している。対中国関係を破綻させたらまずい、「中国はいいお客さんではないか」と、このコラムニストは言う。
トランプ政権は対中関税攻勢と並行して、中国通信機器大手の華為技術(ファーウェイ)への圧力も強め、同社製品をアメリカ市場から締め出すだけでなく、アメリカ企業が電子部品などを同社に輸出するのも制限する方針を打ち出した。第5世代(5G)移動通信システムなどハイテク最先端技術をめぐっての覇権争いが背景だ。
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