トランプ大統領弾劾が不発に終わりそうな論拠

「ミュラー最終報告書」の証拠力は不十分

トランプ大統領を弾劾する「ミュラー声明」なるものが、来日3日後に、アメリカでは大々的に報じられていた(写真: Pool/Getty Images)

5月に来日したアメリカのドナルド・トランプ大統領が、日本で大相撲を観戦したのは5月26日。日本ではビッグニュースとしてこれが大きく報道された。その3日後の5月29日、アメリカでは今年のビッグニュース間違いなしと思われるほどの出来事があった。

それはロバート・ミュラー特別検察官の記者会見である。日本では、「ミュラー氏が特別検察官を辞任へ」という程度の報じられ方にすぎなかったが、アメリカでは、かなり大々的に各メディアで報じられた。

「ミュラー最終報告書」になぜ「結論」がなかったのか

この突然の記者会見は、アメリカのメディアによって「ミュラー声明」と名付けられた。民主党がコントロールする下院で、「司法妨害」を理由に、トランプ大統領に対する弾劾手続きを行うことを事実上、声援するメッセージとして受け止められたのだ。

この連載の一覧はこちら

はたして、ミュラー氏の思惑どおりに運ぶのかどうか。しかしその可能性はほとんどないと、筆者は分析している。

ミュラー特別検察官が448ページに及ぶ「最終報告書」を完成させ、ウィリアム・バー司法長官に提出したのは、2カ月以上前のことだ。そのとき、バー長官はじめ司法省最高幹部たちは、大統領の犯罪がなされたか否かの「結論」が、その「最終報告書」には書かれていなかったことに驚愕した。全米のメディアも、その結論のなさに騒然となった。

司法省の内部方針によると、ミュラー氏がその結論を書かなかったのは、在職中の大統領の訴追は禁じられているからだという。とはいえ、ミュラー氏の言動に疑問を感じたのは、バー司法長官だけではなかった。「なぜ、ミュラー氏は特別検察官職を引き受けたのか?」という批判がメディアでも大きく報じられた。

「ミュラー最終報告書」を受領したバー司法長官は、3月24日、4ページの「最終報告書」に関する「司法長官レター」を署名入りでアメリカ国民に開示した。後に、バー司法長官はCBSテレビを通じて、司法省の責任として、結論部分を示さないことには、これまで多くの強制捜査を実施してきた根拠がなくなってしまうと、明言している。

次ページ「司法長官レター」のキモは?
政治・経済の人気記事
トピックボードAD
関連記事
  • 仲人はミタ-婚活現場からのリアルボイス-
  • ぐんぐん伸びる子は何が違うのか?
  • 新型コロナ、長期戦の混沌
  • 就職四季報プラスワン
トレンドライブラリーAD
人気の動画
商社大転換 最新序列と激変するビジネス
商社大転換 最新序列と激変するビジネス
「話が伝わらない人」と伝わる人の決定的な差
「話が伝わらない人」と伝わる人の決定的な差
渋谷駅、谷底に広がる超難解なダンジョンの今
渋谷駅、谷底に広がる超難解なダンジョンの今
銀行員の出世コースに見られ始めた大きな変化
銀行員の出世コースに見られ始めた大きな変化
アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
  • シェア
トレンドウォッチAD
日本企業は米中の板挟み<br>全解明 経済安保

先端技術をめぐる米中の争いは日本に大きな影響をもたらします。海外からの投資は経済を活性化させる一方、自国の重要技術やデータが流出し安保上のリスクになる可能性も。分断の時代に日本企業が取るべき進路を探ります。

東洋経済education×ICT