実は劉鶴副首相は、習近平国家主席の中学時代の同窓生である。習近平氏は、劉鶴氏がアメリカで行政学の修士号を修める10年も前に、アメリカ中部のアイオワ州で、役人時代に海外研修をしている。この10年の開きは決定的と言える。
習近平氏は、まっさらな状態でアメリカに学んだのに対して、劉鶴氏は、役人としてのキャリア向上のために、アメリカへ留学した。その差は大きい。習近平主席とトランプ大統領とは、お互いの交渉術を超えた「心」の部分で、お互いに許し合える「友情」があると、筆者は深読みしている。
さて、その習近平主席は、いま何を考えているのであろうか。中国という巨大官僚組織の中で、我こそは劉鶴副首相以上に、対米交渉に自信がある、と手を挙げる官僚テクノクラートたちが、「新たな戦略・戦術作りに着手しているであろう」と静観しているのではないか。それが、中国式のリーダーシップというものであろう。
そのことを、トランプ大統領は的確にとらえている。交渉を急いで焦っているのは中国のほうであり、アメリカは急ぐ必要はなく、じっくり構えているのだろう。
「アンフェア」という落とし穴
他方、中国の貿易交渉チームは、通信機器大手ファーウェイ(Huawei)のアメリカにおける問題を、貿易交渉に含めることを主張したが、アメリカ側に拒絶されたと報じられている。アメリカ側の判断は正しい。5G問題は、軍事的な安全保障問題に直結する。貿易交渉のテーマには馴染まないからだ。
いずれにせよ、今回のトランプ大統領の対応の素早さは、全米の注目の的になった。「アンフェア」(不公正)に強い嫌悪感を持つのは、アメリカ市民の共通認識である。株式市場や、2020年大統領選挙をにらんだ中国側の交渉戦術は失敗に終わった。
ライトハイザーUSTR代表が議会証言で明白にしたように、アメリカの未来であるハイテクや知的所有権の分野での中国の「アンフェア」に、アメリカ国民は、より厳しい目を向けてきている。それは、アメリカの未来を背負うアメリカの若い世代も同じである。
この点、バイデン氏は、ロサンゼルス・タイムズ紙の公開インタビューで、ミレニアル世代(1980年代から2000年代初頭に生まれた世代)について厳しい評価を下したことがある。バイデン氏は会場の若者たちに対して、「上から目線」で、「私はミレニアル世代に対して、まったく共感を持たない」と語ったのだ。以来、若者世代の間で、バイデン氏の支持率は非常に低いままで今日に至っている。
今回の中国側の計算違いに対する素早い決断を含めて、トランプ大統領に対する支持は高まっている。トランプ大統領は、自信満々で、2020年の大統領再選に向かっていると言っていいだろう。
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