学会誌が「男性対象」でいいの……?
話を人工知能学会の件に戻しましょう。
学生さんたちにも、学会誌の表紙画像を見せたうえで、意見を聞いてみました。「指摘されなければ、特に問題視しなかったと思う」という女子学生。さらに聞くと「普通に本屋にはこういう本がたくさんあるので、特に引っかからなかった」とのこと。一方で男子学生が「独身男性の願望をよく表してますね」。
周りの友人に聞いたコメントの中でいちばん面白かったのが、「この人らには、ルンバ(自動の掃除機)がこういうふうに見えるんやなぁ」というものでした。なるほど。さらに彼女曰く、「介護ロボットができたときに、それを『ヨン様』に似せて作るか、『壇蜜』に似せて作るか、の違いちゃうの?」とのこと。ますますなるほど。
要は「ビールと発泡酒のマーケティングの違い」の話にここで戻るわけです。人工知能学会の学会誌の表紙は、狭い意味で「性差別」と名指しできるかといわれると、少なくとも私には、少し無理があるように思われます。一方で、この表紙は作り手の性別はともかく、ターゲットを男性(特に独身)においていることは、明らかでしょう。
だからこそ、私は少し「違和感」のようなものを覚えたのです。普通に女性を相手にしてマーケティングをやろうとしたら、この図柄はありえないはずです。つまりこの表紙は、性差別であるかどうかとはさしあたり別に、女性を対象としない、完全に男性からの視線になっている、ということを自らさらけ出すものになっているのです。この学会って、それでいいんでしょうか、本当に……。
「性役割分業」に縛られているのは、女性だけではない
ネット上には、性差別と名指す人たちへの罵詈雑言と、やっぱり違和感があるという人のコメントとがあふれています。その一因は、これが狭義の「性差別」とは呼べなくても、少なくとも女性の視線を無視している、ということに気がついているか否かにあるのではないかだと思うのです。
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