栄養ドリンクのCMって「男性差別」いっぱいやん!?
「ちょっと待たんかい!」と思ったのが、1998年のアリナミンVドリンクで、丸山茂樹を起用したCMです。美人の奥さんが丸山茂樹を玄関先で見送るシーンで「あなた疲れてるのね」。で、休ませてくれるのかと思ったら「でも頑張って!」と送り出されて、ロケットのようにぶっ飛んでいきます。
「なんでおまえは働かんでええねん?」と奥さんに向かって一人で突っ込んでしまいました。次のヴァージョンでは、子どもまで出てきて、「パパァ、頑張ってー」。勘弁してくれよ、です。さすがに批判もあったのでしょう。男女2人でぶっ飛んでいくヴァージョンもありました。
一方、佐藤浩市を起用したリゲインのほうは、歩きながら電柱にぶつかったり、ゴミの代わりに自分のカバンを捨てたり……。「そんなに疲れてるときに、リゲイン飲んで働いてる場合か? はよ帰って寝ろよ!」と、またひとりでツッコミを入れていました。30代も半ばになり、「24時間戦ったら、人間は死んでしまう」という当たり前のことに、私もようやく気がつくようになったのだと思います。
ちょうど新聞に連載を書いていた2003年の初夏に、うつ病になってしまったのですが、連載の中で「あなた疲れてるのね、でも頑張って」なんて「冗談じゃない!」と書いていました。今でもそう思います。これって男性を稼ぎ手としての役割に縛り付けるという意味で、ある種の「男性差別」ではないかと。
そしてそのとき、さらに恐ろしいと思ったのは、チオビタドリンク(大鵬薬品)のCMでした。高島礼子が主婦を演じ、自宅から「あなた~!」と大砲のようにドリンクを送るヤツです。そして「愛情一本」というコピーの後に、低く乾いた声で最後にひと言「働け」。40代を迎え、子育てと仕事の両立に苦しんだ時期でもあり、これは背筋の凍るようなメッセージに聞こえました。一連の栄養ドリンクのCMは、男性を追い詰めるような恐ろしいものに思えるのです。
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