ホームレスは普段どこで何を食べているのか 実態を探ると「貧困ビジネス」の影も見えた

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コンビニエンスストアやスーパーマーケット、レストランなどが廃棄した食品を拾って食べる人もいる。

コンビニは、かつては消費期限が切れた弁当などを店頭のゴミ箱に捨てることが多かった。それを拾って食べた。

一時期は、ホームレスにとってかなり重要な栄養源になっていた。かつてはスーパーマーケットやハンバーガーチェーン店もかなり雑に、売れ残りを捨てている店があった。

上野公園で大きな紙袋を2袋持って歩いているホームレスがいた。

「何を持ち歩いているんですか?」

と聞くと、ニコニコ笑いながら中身を見せてくれた。2つの紙袋の中はどちらも、ハンバーガーショップのしなびたポテトがギッシリと入っていた。

かつては比較的簡単に食べ物を入手できた

当時は比較的簡単に食べ物を入手できていたが、なかにはホームレスが弁当を取れないようにしたコンビニもあったし、ホームレス同士で縄張り(エサ場と呼んでいた)もありケンカになることもあったという。

上野公園近くのアメ横の飲食店では、食べられるものと食べられないものの袋を分けてゴミ出しをしているお店があった。これはホームレスに対して優しくしたいのではなく、汚されたくないという気持ちからの行為だ。

食べられるものと食べられないものを一緒にして捨てると、袋を開けてそこから食べられるものだけを取り出す。そして食べられないものは、放っていくので後片付けが大変なのだ。

食べ物だけの袋で捨てれば、袋ごと持っていくので問題ない。

深夜アメ横を歩いていると、大きな三角形の黒い塊を持って歩いているホームレスがいた。「何を持っているんだろう?」と思ってよく見てみると、生のマグロの頭だった。

「マグロの兜は食べる場所いっぱいあるんだよ。捨てるなんてもったいないね」

と言ってニコニコ笑いながら、上野公園に消えていった。

早朝、露店では廃棄食品を販売していた(筆者撮影)

その後、年々廃棄処分される食べ物の管理は厳しくなり、今は昔のようには簡単に手に入れることはできなくなった。

とくにコンビニは厳しく管理している場合が多い。

ただし蛇の道は蛇、廃棄された食品を手に入れてくる人たちがいる。産廃業者や処分場などと裏で契約して、まだ食べられる廃棄食品を集めるのだ。

大阪のあいりん地区では、露店でそれらの食品を販売していた。かつては堂々と販売していたが、露店への取り締まりが厳しくなったので、原則早朝だけの販売になった。

まだ暗い朝5時頃に、弁当やおにぎり、パンをテーブルやビニールシートの上に並べる。弁当は100円、おにぎりやパンは3個で100円と、とても格安だった。コンビニやスーパーの商品も多かったが、なかにはお葬式用のお弁当が何個も売られていることもあった。

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