孫:僕も伊佐山さんと会ったとき、衝撃を受けました。当時は、ヤフージャパン立ち上げ以来、シリコンバレーの起業家の人たちとは時々会っていたのですが、ベンチャーキャピタル(VC)の人とはコミュニケーションを取りはじめた時期。まさか、シリコンバレーでトップティア(先頭集団)に日本人がいるとは思っていませんでしたから。
日本人に限らずVCは、金融はわかるがテクノロジー・コンテンツがわからない人が多く、反対にテクノロジー・コンテンツがわかる人は金融がわからない人が多い。そのなかで、伊佐山さんは両方、幅広くわかっていて、最先端の情報もキャッチアップしているので、僕にとっては大事な情報源でもあります。しばらく会わなくても、「これ面白いですよね」「それ僕も追いかけてたんですよ」と話がシンクロします。
「オレの古傷がうずく」が正しい理由
伊佐山:最近、ソフトバンク・孫正義社長はスプリントの買収をはじめ、積極的にグローバルで活躍されています。その一方で、正義さんはこれまでコムデックスの買収などで大損もしている。それをどう乗り越えているのですか。
これまで多くの起業家に出会いましたが、なかには過去の失敗がトラウマになって、せっかくのチャンスを逃している人もいる。ただ、失敗は辛い。どうしたら良いのでしょう?
孫:彼は投資を決めるとき、もし仮にすべてが最悪のシナリオに転び、評判も最低になってしまったらどんな被害が生じるかという「最大の被害」を常に計算し、それでも大丈夫かどうかを考えています。彼はそのことについて独特の面白い言い方をするのですが、「トカゲは身体の3割くらい切れても、しっぽがまた生えてくる。ただ、お腹まで切れてしまったら、再生できずに死んでしまう」と。だから、常に最悪の事態を計算し、リスクが「しっぽ」にとどまる場合、すなわち死なないとわかれば投資をするんだと言っていました。
伊佐山:過去の失敗体験は忘れている?
孫:失敗から学んだことはもちろんしっかり覚えていると思いますが、失敗そのものを後生大事に覚えていて、「いくら損しただろう・・・・・・」なんて考えていたら、ものすごく気持ちが落ち込みますよね。だからあんまり覚えていないんじゃないですかね(笑)。僕ですら、累計100億円じゃくだらないくらい失敗してお金を失っていますが、いちいち全部覚えていてくよくよしてたらおかしくなっていたと思います(笑)。
でも、僕は「失敗は勲章だ」と思っています。“歴戦の武将”で切り傷のない人はいません。傷ひとつなければ、前線で戦っていないことになる。「オレの古傷がうずく」と言えるのはリスクをとり、かつ死なずに生き残った人だけです。むしろ切り傷だけで済んだからこそ、「これ以上はヤバい」ということをわかっている。歴戦の武将こそが生き残って天下統一ができるのです。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら