「どうやって死のうか」と考えた失敗もあった
――失敗が大切だということについて、お二人の「失敗」談を若い人に向けてお話ください。
伊佐山:僕は投資をして、心理的に追い込まれることが結構あります。一番しんどいのは、自分がすごくコミットして当初うまくいっていた会社が、軌道に乗ったと思い少し離れた後でダメになること。投資の失敗ももちろんダメージですが、支援していた人から“逆恨み”されることのダメージが大きい。立ち上げ時から関わって支援をしているので、創業者間の喧嘩に巻き込まれる。「お前がこのときにお金を出さないからダメになった」とポイントフィンガース(なすりつけあい)が起きる。
僕も、年金や金融機関から資産運用としてお金を集めて投資しているわけだから、感情的に「わかった、投資するよ」とはできない。たとえ、僕が「もう1回チャンスをあげたい」と感情的に言っても、会社の他のメンバーが「イエス」とは言いません。それを支援を打ち切ったベンチャーの経営陣に言うと「昨日まで同じ釜の飯を食って、ブラザーだと思っていたのに、許さない!」となる。アメリカは銃社会だから、身の危険もある。取締役会に従業員が来て銃を乱射するという事件も実際にあったので、命の危険があるんです。
そこから学んだことは、人との関係です。いいときは何も考えなくてもいいのですが、人が難局にぶつかった時にどうやって接するか、しっかり考えるようになりました。
孫:僕が最初に起業した会社は、大学時代の友人と一緒に事業をはじめたのですが、最終的にお互いを恨み合う形で仲違いしてしまった。2000年のドットコム・バブルがはじけた後、仕事が8割減と急減し、資金繰りがきつくなり、誰よりも苦楽を共にしてきた仲間と確執が生まれてしまった。「お前の責任だ」「どうやって責任をとるんだ」「俺たちの数年間を返せ」と言われたのですが、「すまん」で済む話ではないですよね。
二十代後半でまだ人間的にタフではない時だったこともあり、借金の返済期間がきて給料が払えるかどうかわからないような状況で、無二の親友とも仲違い状態になってしまいました。そもそも自分が会社をはじめてしまったがゆえに、仲間を不幸のどん底に陥れ、本当に多くの人に迷惑をかけてしまったと、夜も眠れませんでした。本当に「死んだほうがいいかもね」という状態まで追い込まれ、「どうやって死のうか」ということを考え続けたことも1回や2回じゃありませんでした。
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