「超えてやる」という思いを持ち続ける
伊佐山:「泥臭い経験が必要だ」と言うのは簡単ですが、実際に行動に移すのはむずかしい。それが強烈な経験になればなるほどです。でも、そこで「必ずどこかで活かせるはずだ」と思ってトライできるか、“ゲームオーバー”にならない経験をどこまで積めるか――が重要だと思うのです。僕自身も、今後、できる限り「挑戦」をしていきたいと思っています。実際に今も、自分の限界にぎりぎりのことをやろうとしている。
――「挑戦」が必要な若い人たちは、どういう人をロールモデルにすべきでしょうか。
孫:それは人によると思います。高みを見て「いつか登ってやる!」というほうが元気の出る人もいれば、「あの人ができるなら、オレでもできる!」という感じでモチベーションがあがる人もいる。“絶対解”としてのロールモデルはありません。だから、ロールモデルはひとりひとりいるべきなのです。
僕のロールモデルは、ヤフーの創業者・ジェリー・ヤンです。僕は、兄(孫正義)や親父のように、血のにじむような想いをして、血反吐を吐きながら、そして強烈な借金をしながら、平然と勝負している姿を横目に見て、「絶対に無理!」と思っていましたから。学生時代は、事業家と経営者にはならないと決めていたくらい(笑)。
僕の今があるのは、ジェリー・ヤンと出会ったからだと思います。彼と出会ったのはヤフージャパン立ち上げのときで、僕が23歳の頃でした。ヤフーの創業者なので「どれだけカリスマ的な存在だろう」「口きいてくれるかな」と会う前は思っていたのですが、いざ会うとフランクでフレンドリー。楽しそうに経営していました。
それまで、僕は経営者の苦しいところばかりを見ていたので、ジェリー・ヤンの楽しそうな姿を見たことで、「僕もできるかもしれない」と思ったから、今があると思っています。
伊佐山:僕の場合は、「この人」というロールモデルではなく、身内も含めて、パーツごとに目指す人がいます。身内の“親”であれば、元官僚としてこれからの日本をどうするかということを未だに四六時中考えていて、その問題意識は僕の中にも植え付けられている。だから、今やっている、日本のベンチャーシーンを活性化させたいというビジネス活動も、社会的に貢献したいという要素が色濃く出ていると思います。
リアルな人を真似しようというのではなく、自分の中で「こうありたい」という目標がある。例えば今は、野球のイチローのようにベンチャー業界の本家のアメリカ人にも一目置かれるような存在になること。今の自分が目指したい仮想モデルがあるんです。そして、その仮想モデルも追いつけば、また変化していく。
孫正義さんについても、「彼は宇宙人だから違うよね」と済ませる気はなくて、追い越すのは大変だと思いますけど、追い越すという気持ちをもって、「ここだけは超えてやる」という思いを持ち続けたいですね。
孫:ただ、追いつかなければいけないのに、反対に離されている気もしますよね(笑)。宇宙のビッグバンじゃないですけど、遠くにある星ほど外へ向かって速く離れているというじゃないですか。こっちもめいっぱい頑張ってるんだから追いついているはずだと思っていたら、いつのまにかもっと離されている、そういう感覚がある。それでも僕たちも負けていられないですよね。
(撮影:今 祥雄)
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