27歳「外国人女流棋士」の驚くべき意地と根性 ステチェンスカ女流一級の夢のかなえ方
日本人の感覚からすると修業はつらくて当たり前、逆に楽しんではいけないことのような気がするが、確かにつらすぎると続かない。特に精神的につらい局面になったとき、楽しくなければ投げ出してしまいがちだ。
もう1つ、モチベーションを保つ方法としてカロリーナさんが実践しているのは、「大きな目標達成のために、まずは一段階小さな目標を設定する」ことである。たとえばカロリーナさんの場合、プロの棋士になるためにまず日本行きを、将棋の国際的な振興促進のためにブログの開設やオンラインマガジンの発行を設定した。
「プロになるという大きな夢をかなえるために、『現実的に今、すべきことは何か』という小さな目標を立てることを考えました。プロになるには将棋の上達が必須。そのためには日本語や日本文化の習得が重要。それらを習得するため日本で生活することをまずは目指しました」
今では日本語で取材をこなせるほどになったが…
将棋情報のほとんどは日本語で書かれているため、日本語ができないと学習法は著しく限定されてしまう。ポーランド人は外国語習得の才があると言われるが、それでも多くの人が漢字に苦労する。そこで、ビギナーのころカロリーナさんは駒に書かれた漢字をイメージで覚えるようにしたという。
たとえば――
fu is like a smiling face in hat
「歩」は帽子をかぶって笑っている顔のイメージ
rook has wings on the right side
「飛」は右サイドに翼がある
gold is like kinkakuji
「金」は金閣寺のイメージ
bishop has legs to run diagonally
「角」は斜めに走る足がある
日本語を母語とする人なら、しなくて済んだ苦労といえるだろう。山梨学院大学に通っていたころは毎日3時間、日本語の宿題をしていたという。その甲斐もあり、今では取材も日本語でこなせるほど上達している。
「将棋の国際的な普及促進」という大きな目標に向けては、5月には誰でも無料でダウンロードできる「インターナショナル・ショウギ・マガジン」の第1号をオンライン上でリリース。 8月には第2号も発行された。コンテンツはすべて英語で、「藤井聡太7段インタビュー」や「アジア諸国以外での将棋の教え方」から「将棋と脳科学」まで内容も驚くほど充実している。
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