27歳「外国人女流棋士」の驚くべき意地と根性 ステチェンスカ女流一級の夢のかなえ方

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期限内に2級になれなかった場合は、研修会に出戻りとなるが、研修会は「女流棋士を目指す25歳以下のアマチュアの女性」が対象という年齢制限があった。カロリーナさんは2017年6月17日に26歳になっているので、もし期限の2年以内に女流2級に昇給できていなければ、研修会に戻ることはできず、事実上、プロへの道は断たれたはずだ(*2018年4月1日より女流棋士規定は変更されている)。

もともと「負けん気が強く、決めたことをやり抜く意志が強い性格」と自らを分析するカロリーナさん。棋士にはそういう性格の人が多いという。それでも、期限が決まっているというのはかなりのプレッシャーで、日常生活でもイライラすることが多く、ちょっとしたことで友人と口ゲンカすることも。当時は山梨学院大学(卒業後は大学院)に在籍中だったが、大事な試合の前は授業に集中できないこともあったという。

自分の楽しめるやり方を見つける

「ストレスがたまったときは近所を散歩したり、コンピュータゲームで気分を切り替えたり、ポーランド語ができるドイツ人の友人としゃべりまくったりしていました」とカロリーナさん。やはり、母語で思う存分おしゃべりするというのはストレス発散に効果的なようだ。

精神的にプレッシャーを感じつつも、コツコツ地道に将棋の研鑽を積み、プロ入りを果たしたのは2017年2月20日のことだった。なぜそこまで頑張るかというと「将棋が大好きだから」。ただしどうしてそんなに将棋が好きなのかは自分でもよくわからないという。「人の感情というのは理屈では割り切れないものです」とカロリーナさん。

極限状態のプレッシャーを感じながらも、モチベーションを維持できた秘訣は何なのだろうか。カロリーナさんに聞いてみると、その1つは「自分が楽しめるやり方を見つける」ことだった。将棋の上達には、効率的な駒の動かし方のパターンを覚えることが必須で、しかもただ記憶するだけではなく、実際の対局の場で応用できるようにしなければならない。

今は寝ても覚めても将棋をしている状態だ。自分があきない、好きな方法を確立することが地道に練習を続ける秘訣にもなっている(編集部撮影)

そのための訓練法としては、棋譜の研究や詰将棋を解く、将棋に関する本を読む、道場などで人と対戦する――といった方法があり、もちろんカロリーナさんもこうした地道な訓練を日々行っている。とはいえ、結果がすぐに出るとは限らない中で、重要なのが修行を「楽しむ」感覚なのだという。

「たとえば、詰将棋は将棋の上達に必須と言われますが、詰将棋を嫌いな人が無理にやろうとしても続かないものです」とカロリーナさん。「子どもがいい例だと思います。彼らは難しいことを考えずにシンプルに楽しもうとするから、上達も早いですよ」。

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