埼玉県が進める「新学力調査」は何が凄いのか ビッグデータでわかる良い教師の条件とは?
50メートル走を7.5秒で走ることを目標としたとき、7.4秒で走った生徒Aの担任教師が、7.6秒で走った生徒Bの担任教師より優秀といえるだろうか。無論、子どもの足の速さだけで教師の力を結論づけられない。
学力も同じである。良い結果を出した子どもの担任教師が「良い教師」とは限らない。そもそも教育の本質的要素は、子どもがどれだけ高い結果を出したかではない。子どもの力をどれだけ伸ばせたかどうかが重要である。要するに「伸び率」が良い教師を見極める判断材料となる。
従来型の試験では「伸び率」を見られない
良い教師・良い指導を知るには「伸び率」を正確に把握する必要がある。
たとえば、ある子どもがテストで今までに取ったことのない高得点を挙げたとしよう。だがこれでは、テストが簡単になって高得点が取れただけかもしれない可能性が残る。
つまり、テストの結果を成長の証と見なすためには、それぞれの試験の難易度差を考慮する必要がある。
しかし、テストの正答率を判断基準にしたり、同じ試験を受けた子どもの中で順位付けしたりする従来型の試験は、「伸び率」の把握に焦点を当てた設計になっていないと指摘されている。
そこで埼玉県は、新しい学力調査を始めるに当たり、「項目反応理論(Item Response Theory;IRT)」と呼ばれるテスト理論を用いることにした。
IRTは、TOEFLやSAT(米大学進学適性試験)で用いられている現代的なテスト理論であり、「伸び率」の把握に活用することが可能といわれている。OECD(経済協力開発機構)が実施する学力調査などでもこの理論が採用されている。