マリオの見つめる先から、決まり切ったコースが消えた。1981年のデビュー以来、任天堂の看板キャラクターとして多くのゲームに登場してきたマリオ。世界的にヒットとなった『スーパーマリオブラザーズ』の、2次元のステージを右へと進んで行くシステムは、その後の多くのゲームで採用された。
そのスーパーマリオに新しい概念を持ち込んだのが、2015年9月に発売された『スーパーマリオメーカー』(Wii U)だ。プレーヤーがスーパーマリオのコースをみずから作るゲームである。インターネット上で世界中から集まったオリジナルコースは300万を超える。決まり切ったコースやレールが無くなったのはゲームの世界だけではない。そんな世相を感じさせる。
マリオの登場から34年。マリオとともに成長してきた今の30~40代は学歴主義の教育に浸り、良い点数・良い評価を求めてきた。『21世紀のビジネスにデザイン思考が必要な理由』(クロスメディア・パブリッシング)の著者である佐宗邦威氏もマリオとともに成長してきたみずからをそう分析する。
これからの社会に求められるモノは何か、また子どもの未来のために教育的観点からできることは何なのか。本連載は算数サポートサービスの「RISU」を立ち上げた筆者が、そんなテーマに迫っていく。第3回は佐宗氏と「これからの社会づくり」について議論を交わした。
僕たちは正解を求めてフィードバックをもらっていた
加藤エルテス 聡志(以下、加藤):「学校は昔の価値観のままだ」とは誰もが指摘しています。先生や親には彼ら世代の価値観があって、それを軸にして子どもを教育しようとしますが、時代が変われば常識も変わる。今やるべき教育の方法論とは何か。過去から振り返って現在、そして未来に至る変化を佐宗さんはどのようにとらえていますか。
佐宗邦威(以下、佐宗):まず、私たちの世代は偏差値教育全盛の時代の中で育ちましたよね。正解がある世界の中で、それをいかに導き出すかという価値観に浸って育ちました。私がそのことを自覚したのは、むしろ社会人になって最初の会社、P&Gで働いていたときです。頑張れば褒められるインセンティブづけがうまい会社で、すごく頑張って働いていた中で、途中で燃え尽き症候群になってしまいました。誰かから褒められるというか、「より良い成果を出すことで、より良く評価される」というモデルが当たり前だったけど、その延長上で、『これからの人生、これでよいのだろうか?』と立ち止まったんです。
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