加藤:大人になって新しいものに取り組むのが怖いって、ビジネスマンの成長という観点からすると、けっこう深刻な問題なのかなと思います。恐怖心を持ってしまった人を変えるのは難しいですね。ただ、それはそういう生き方であり、別に変えるのが正しいとも思いません。そういう生き方の人なのだと肯定してあげるのが、正しいって意見もある。いろんな価値観の人がいると私たちも寛容に構えているのがいいかもしれませんね。
子どものクリエーティビティのための社会づくり
加藤:私の自己表現に近いのは「事業を作る」ことで、それはクリエーティブな活動なのかなと思っています。組織をどうやって作るか、スタッフにどうやったら楽しく働いてもらえるかなどを考えて実行する。私にとってのクリエーティビティというのはそういう時に発揮されるもので、うまく行った時には本当に嬉しいし、逆に絶体絶命だと思っている時とかは、風呂場で悩んじゃって出てこられないぐらい没頭しちゃいます。
佐宗:そういう楽しさは学生時代にありましたか?
加藤:いや。微妙ですね。
佐宗:微妙ですよね。
加藤:授業ではそんなの習ったことないですね。生徒会をやったことがあるんですけど、まったくクリエーティビティではなく、単にオペレーションを回すだけでした。
佐宗:学生時代にクリエーティビティを学ぶ機会があるとすれば、文化祭でしょうか。すごく小さなものでもゼロから作る。受験勉強とは関係なくて一見無駄に見えるものでも、経験することで企画運営の面白さに気づくことができれば、クリエーティビティを学ぶ最初のステップになるのではないでしょうか。
加藤:「学生の本分」の学業の外にも、企業で活かせる気付きがありますね。
佐宗:企業も教育も同じで、基本的には仕組みの中で回っています。社会という仕組みも、組織って仕組みも回さないと破綻してしまうから、上手く回すために効率が求められてくる。当たり前のようにしてきた従来の方法論に対して、時代や価値観の変化に対応するフレキシビリティを加えて改善していきます。一方で、ある程度の「遊び」が必要だと私は考えています。ムダは無くしても、余白は作るという考え方。逆説的ですが。無理矢理にでも空白を作らないと今の時代は遊びができないという現実もあります。放っておくとどんどん時間がなくなる。教育が強制的にでもできることは、白紙のキャンバスを用意してあげたり、規制をゆるくしてあげたりというようなことです。あえて日常のルーティンから壊してあげるのが、親の役割です。
加藤:子どもの余裕確保が大切だと。
佐宗:先日、高校生起業家4人と対談したときにも、余白の大切さを感じました。「学校で教わったことはありません」って4人とも共通して当たり前のように言っていて面白いと思ったんです。彼らがたまたまビジネスコンテストに参加した時に会った大人が、変な人だったらしいのですが、その変な大人との出会いにより、「そういうことを僕らもしていいんだ」と彼らも感じたようです。無理矢理に自分の時間を作り、そこで自分の好きなことにもっと時間を使うことを自分の中でOKを出してしまった。変な大人の持つ余裕に4人は気づいて、大人を真似しながら、空けた時間を使ってネットにアクセスして、いろんな人たちと繋がっていった。
加藤:学校では会わない「変な大人」の方が、学校よりもインスピレーションを与えたと。
佐宗:そうですね。私たちも気をつけないと若い人に悪い影響を与えかねませんよ(笑)。これからの子どもには、非日常的・偶発的な出会いを求めて、知り合った人から学んだことや気づいたことを実行に移せる余裕を自分で作っているかが求められます。そして、大人たちは子どもがそういった機会に恵まれるように環境を整えなければなりません。大人にも、子どもにも、余裕を持って生活していくことが求められます。
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