加藤:佐宗さんは東大法学部を卒業されて、そのままマーケティングに強い一流企業であるP&Gに入り、花型であるマーケティング部門で表彰もされていらっしゃいましたよね。外からは順風満帆なエリートですが、働いてみて「何かが違う」という違和感を持ったのでしょうか?
佐宗:そうですね。突き詰めると周囲の人から良いフィードバックをもらうというのは、麻薬のようなもので、いざそれがなくなるともろいということです。「受験戦争」「偏差値教育」の価値観は疑問視され始め、「ゆとり教育」になっていった時代の変化とも同期しているように今となっては思えますね。
これからは私たちの世代がどんどん大人のマジョリティになっていくので、私たちの世代が率先して仕事の仕方を自分たち自身のやりたいことを実現しやすくする環境を作り出すことでもっとクリエーティブに変えていく必要があります。僕は「21世紀のビジネスニデザイン思考が必要な理由」という本の中で、ビジネスマンが学べる創造性としてデザイン思考が役に立つことを書いているのですが、デザイン思考のようなものを使った働き方を当たり前にすることで、ゆとり教育を受けた若いビジネスパーソンの個人個人の個性を生かすということもできます。
働く環境がクリエーティブに変われば、生き生きする人が増えるでしょうし、結果として色んな新しいものも自然と生まれてくるでしょう。自分たちが実践していることが、次の世代をさらに刺激することに繋がります。そういう社会を作れたらいいなと思います。
加藤:デザイン思考を通じて、ビジネス界全体をクリエーティブにしようとしていらっしゃるんですね。
子どもの頃、夢中になった遊びは?
佐宗:新しいものが生まれる仕組みを作って、その仕組みが上手く働いているかを現場で支援してあげる。そのために、デザイン思考のような一種のテクノロジーを導入する。
そういう環境整備を多くの会社がやっていくと、どこかのタイミングで一気に技術や価値観がジャンプする瞬間がくると思います。だから、クリエーティブに仕事をすることが当たり前になるような文化や規範をこれからの主軸を担う私たちの世代が作っていき、最終的には子どもたちのクリエーティビティを刺激できるような社会に出来たらいいなと思います。
私は留学中にMITメディアラボのクリエーティブラーニングというプログラムに参加したことがあるのですが、「あなたが小さい頃にいちばん衝撃を受けたおもちゃとの出会いは何でしたか?』という質問をされたことがあります。加藤さんならどう答えますか?
加藤:ずっといじって遊んでいたのは、レゴでしょうか。いろんな形を作れることが好きでした。あとは、やはりファミコン(ファミリーコンピュータ)でしょうか。佐宗さんは?
佐宗:私は三国志のカードゲームです。武将をコレクションして、いい人材を引き継げたら勝てるというのが、大まかなルールです。MITメディアラボがこの質問で意図しているのは、子ども達は小さな頃にハマったモノから世界の構造を学んでいるということです。
加藤:なるほど。
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