埼玉県が進める「新学力調査」は何が凄いのか ビッグデータでわかる良い教師の条件とは?
埼玉県学調は世界からも注目されている。
世界35カ国が加盟するOECDは、非認知能力を伸ばす教師の条件を知りたがっている。しかし、OECDが実施している学習到達度調査(PISA)は、同一の子どもを対象に継続的に調査しているわけではない。そのため、国際教員指導環境調査(TALIS)と結びつけても、いい教師の条件の把握には限界があると指摘されている。
そこでOECDは埼玉県学調に注目し始めた。PISAを考案したとされる「ミスターPISA」こと、シュライヒャーOECD教育・スキル局長は、2017年7月に来日した際に埼玉県を訪問し、埼玉県学調を高く評価して連携の必要性を主張した。
埼玉県が生み出した新しい学力調査が今後、世界の教育政策に影響を与える存在になる可能性もある。
「新学力調査」が教育の在り方を変えていく
近代の学校教育制度が、近代社会が形成される中で生まれてきた比較的新しいものであることを踏まえると、現在の制度が未来にわたって不変であるとは言えない。
人工知能やビッグデータの研究を行う理化学研究所の星野崇宏氏は、2017年12月に開催された「学力向上コンソーシアム」で、「これまでの学校・教師の役割に関して、AIで代替できる部分と人でないとできない部分が、データを分析する中で見えてくる可能性がある」と指摘している。
今後、子どもたちが問題や質問に回答した結果を集め、AIを含めた解析を通じて、AIが個々の子どもたちに最適な練習問題を出題するなど、AIが解決策を提示して教師をサポートする時代が到来する可能性もある。
一方、埼玉県学調では、非認知能力が子ども同士または子どもと教師とのかかわりの中で培われることも示されている。どれだけAIが発達しても、教師のもとで人々が学び合うという学びの本質や教師の必要性は今後も変わらないであろう。
現在の学校・教師の役割にビッグデータと最新技術が変革をもたらすとともに、子ども一人一人の学力や非認知能力が客観的に把握できるという新たな展開は、今後の教育の在り方に一石を投じることになるだろう。
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