「与えられた目標が高ければ高いほど、それだけ多く期待されている証しだとうれしい気持ちになります。それに、うわー、先が全然、見えないという環境のほうが、ワクワクするんです」
ほとんど登山家のような感覚か。
しかし“山”を登れば登るほど、“平地”との距離は遠のく。石田さんは局長になって初めて、現場との乖離を感じたと言う。
「局長になると、日頃、接するのはマネージャー、リーダークラスばかりになります。彼らは、報告がうまいんですね。いいことも悪いこともうまく報告してきます。それに、上げてくる情報がどうしても主要顧客の情報に限られる。でも、組織にとって現場の情報が拾えないのはリスクです。ですから私は、あえて、メンバークラスに熱心に話しかけ、彼らが困っていることの課題に答えるようにしました」
本人曰く、何度も試行錯誤しながら、現在に通じる「“聞く”マネジメント」を鍛えていったと言う。
そんな頃、石田さんはプライベートでも転機を迎えていた。マネージャー時代から交際していた同じ会社の2年上の先輩との結婚が、決まったのだ。
「同じ会社といっても、ほとんど、一緒に仕事したことのない相手だったのが、よかったのかもしれません(笑)。彼の趣味のゴルフを教えてもらったりするうちに、仲良くなりました」
妊婦になって、部下60人に昇進
2009年11月に結婚し、すぐに妊娠した。そんな折、仕事面でも大きなチャンスが巡ってきた。
局長の上の「統括」に上がってくれと、昇進の打診が来たのだ。統括ともなると、部下はおよそ60人になる。ほとんど、中小企業の社長クラスの規模感だ。
「主人とも相談し、『妊娠しておりますので、ご迷惑をおかけすることになります』と丁重にお断りしました。そうしたら、社長が『そんなの関係ないから、やってほしい』と言ってくださったのです」
その一言で、迷いは吹っ切れた。
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