起業のチャンスを与えてくれたのは、シカゴ・ブースで受けた2つの授業だ。
つは、スティーブン・カプラン教授の「New Venture Challenge」(新しいベンチャービジネスへの挑戦)。そしてもう1つが、ウェイバリー・ドイチュ特任教授の「The Polsky Center Accelerator Program」(起業家の卵を集めた夏の集中プログラム)だ。(授業の詳しい内容は『世界最高MBAの授業』をご参照ください)。
「ベンチャー企業の取り組みは、業界に新たなスタンダードや変革を生みだしています。この2つの授業に参加することによって、自分も、努力次第でその変革に貢献できるということを具体的にイメージできたことが大きかったです。まずは、情熱を傾けられるクリエイティブ産業の分野で起業に挑戦しようと思いました」
起業は、「冷静」かつ「合理的な」決断
森田さんは、2つの授業を受けてから、今年の春に卒業するまでの期間、目の前にある起業のチャンスを前に、考えに考え抜いた結果、経済産業省の退職を決意したという。留学直後の退職は、モラル上の問題もあり、自分の中で葛藤を抱えながらの決断だった。1000万円を超える学費は、国に返還する。
「日本のために何ができるか考えたときに、もちろん経済産業省にいたほうが確実に大きな仕事に関われます。そして、学費の返却と起業資金のことを考えれば、生活が不安定になるのは間違いありません。それでも、オリガミ社の起業に挑戦しようと決断しました」
今後の生活については、楽観から悲観まで、さまざまなシナリオを検討した。そして、『ここまでやってダメだったらこうする』というリスクヘッジ案をしっかりと想定した。
「『情熱に従いなさい』といった言葉は、将来の起業家へのメッセージとしてよく取り上げられますが、それだけを重視した決断ではありませんでした。自分自身の目標や、『人としてこうありたい、こうあるべき』という自分が大切にしている価値観、生活のリスクなども冷静に考えながら、プロセスにのっとって、合理的に決めた結果です。この自分なりの意思決定プロセスを身につけられたのも、留学中の学びの1つでした」
2013年8月。森田さんは5人の友人とともに、アメリカのシカゴと東京で「オリガミ社」を創業した。創業にあたっては、シカゴ・ブースでのコンペのときから応援してくれていた友人たちや、日本の友人たちが、一部、投資してくれたという。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら