官僚の地位を捨て、起業家へ
まさか、森田博和さん(33)が、シカゴ大学ブースビジネススクールを卒業後、こんなに早く起業するとは思ってもみなかった。
「卒業後は、経済産業省を退職して、アメリカで起業することを決めました」
そう報告があったのは、追加取材をした今年7月のことだった。
昨年の取材の過程で、森田さんの起業に懸ける並々ならぬ情熱は感じていたし、コンペで勝ち残ったこともあり、「オリガミ社」の起業プランがどんどん現実化していったのも知っていた。
しかし、起業コンペへの挑戦は、あくまでも森田さんにとっては、起業を疑似体験するためであって、最終的には、帰国後、経済産業省の仕事に役立てるためだと思っていた。
官庁出身者が、国費留学の後、マッキンゼーやBCGなど、経営コンサルティング会社に転職する話はよく聞くが、アメリカに残って起業した日本人の例は、あまり聞いたことがない。
官僚から起業家という転身に、筆者は驚きを隠せなかった。
森田博和さんは、2011年、シカゴ・ブースに留学。留学を志したのは、内閣府宇宙戦略本部で、宇宙開発利用に関する政策の企画、立案を担当するうち、最先端の技術やビジネスをアメリカで学びたい、と思ったのがきっかけだった。
しかし、東日本大震災をきっかけに、日本を復興させるには、ベンチャー企業を生み出し、育てることが急務だと感じ、シカゴでは「起業」について深く学ぶことにした。シカゴでは数々の起業コンペに挑戦。中でも、日本のアーティストと海外の市場を結び付ける「オリガミ社」の起業プランは、2012年、シカゴ・ブースで開催されたビジネスコンペで高く評価された。
オリガミ社の創業目的は、日本のアーティストなどに海外で活躍できるプラットフォームを提供すること。コンペでは、日本のアーティストを世界の市場につなぐ役割を担い、日本文化と経済の発展に貢献できるビジネスモデルを提案した。オリガミ社の起業は、2012年夏のコンペでの入賞を機に、どんどん「現実化」していった。
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