MBA留学は人生を変えるのか? 前回記事に続き、昨年11月より連載した「超一流MBA校で戦う日本人~世界一すごい授業が人生を変える」に登場した方々の、「MBA留学後」をお伝えします。
今回は、在学中に、社会的企業への支援を目的とするベンチャーキャピタルを共同創設したMITスローンスクール・オブ・マネジメントの山本未生さん(34)です。山本さんは、化学会社を退職し、私費留学。MBA留学の目的は、日本で社会起業家を支援する仕組みを作り上げるために必要な知識を身に付け、世界的な人的ネットワークを築くことでした。いわば、卒業後、時に投資家として、時に社会起業家として、活動していくためのベースづくりです。
社会起業家を目指す人がMBA?と思うかもしれませんが、「雇用やビジネスを生み出してこそ真のリーダー」と教えるビジネススクールでは、社会起業家は、最も尊敬される職業のひとつになっています。それは、新興国や被災地を援助する仕事は、金銭的にも、ライフスタイル的にも、ハードルが高い挑戦だからです。
今年の夏に山本さんを再度取材した際、「経営コンサルティング会社の内定を辞退するかどうかは、とても大きな決断でした」と語りました。
本連載で何度もお伝えしていますが、MBA留学の費用は、授業料だけでおよそ1200万円です。私費留学の人たちは、その学費の大部分を教育ローンで賄っています。特にアメリカで借りると利率が、6~8%に及び、返済に何年もかかります。
夢だけでは生活できませんが、かといって、生活のために夢をあきらめるわけにもいきません。そこで、多くの卒業生は、投資銀行や経営コンサルティング会社でおカネを稼いで、ローンを返済した後、好きなことを始めるのです。 学費のほとんどをローンで賄った筆者もご多分に漏れず、さまざまな選択肢の中から「まずコンサル」に就職しました。その後、テレビ・出版業界に戻り、現在に至ります。
筆者は、山本さんは、これまでも仕事と社会貢献活動を両立してきたわけだから、もしかしたら、経営コンサルティング会社に数年行くのかもしれないなと思っていました。その会社は、誰もがあこがれるトップコンサルティングファームです。ところが、山本さんは、回り道をするのはやめた、と言います。
「MITの友人たちからも、内定を辞退したときは、『You are brave!』(何て勇敢な決断なの!)と言われましたよ。でも、一度、全力で、東北の復興支援活動をやってみようと思うのです」
無料会員登録はこちら
ログインはこちら