「経営コンサルティング会社で数年働いて、ローンを返してから、社会貢献の道に進む道もあるのでは……。もしかしたら経営コンサルティング会社でも、社会的企業にかかわれるかもしれないし……」
実際に、経営コンサルティング会社に入社することを検討した。しかし、MITで受けた授業や、在学中に一緒に社会貢献活動をした人との出会いが、ソーシャルビジネスの道に進むことを決断させた。
山本さんが特に影響を受けたのは、2つの授業だった。ひとつは、オットー・シャーマー教授の看板授業「U-Lab: Leading Profound Innovation for a More Sustainable World(U理論の実践:サステイナブルな世界を目指して、深いレベルでのイノベーションをリードする)」。
もうひとつが、リチャード・ロック教授の「Entrepreneurship and Sustainable Economic Development in Puerto Rico(プエルトリコでの起業と持続的経済開発)」だ。特にオットー・シャーマー教授の次の言葉は、山本さんの心に強く響いた。
「私もかつて、MITで働くか、マッキンゼーで働くかという決断をせまられたことがある。収入を考えれば、マッキンゼーのほうが何倍もよかったが、自分がやりたいことを重視して、MITで研究をすることを選んだ。そしてそれは正しい選択であったと信じている」(授業の詳細については、「世界最高MBAの授業」(東洋経済新報社)をご参照ください)。
「MITでこの2つの授業を受けて、『自分が今、いちばん一生懸命になれること』を選ぼうという気持ちが強くなりました。シャーマー先生の言葉にも影響を受けましたし、ロック先生の授業では、社会貢献活動のプロジェクトに夢中になりました。やっぱり『私にはこれしかない』と思ったのです」
社会起業家としての、怒涛の日々
今年の夏、山本さんを再び取材すると、夢の実現に向けて、着々と動き出していた。2013年7月1日、一般社団法人ワールド・イン・アジアの代表理事に就任。早速、仙台を拠点に活動を始めていた。小さなウイークリーマンションを借り、東北の復興支援活動を行っている。
ワールド・イン・アジアは、アメリカや日本で調達した資金を基に、有望な社会的企業に対して投資し、ビジネスモデルや人材マネジメントなどについても助言する非営利団体。その目的は、「世界レベルでの課題を解決する社会的企業をアジア圏から輩出すること」だ。
現在は東京、仙台、ボストンに拠点があり、復興支援事業が主な支援対象となっているが、将来は、日本を含むアジア各国での社会的事業への出資も視野においている。
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