ギザギザの溝が深い靴底を持つ靴が滑りにくいのは、積もった雪をグリップ(つかむ)する力が増すから理解できるだろう。しかし、靴底の「ゴムの柔らかさ」も重要だという。とくに凍結した路面を歩くときは、いくら靴底の溝が深くても、凍結した路面はなかなかグリップすることができない。加えて、靴底が硬いと雪面に密着しにくくなり、つるりと滑る可能性が高まるからだ。
「これもまたクルマの冬用スタッドレスタイヤと同じです。冬用タイヤは凍結路でのグリップ力を高めるため、夏用よりもゴム質が柔らかくなっています。だからこそ冬用タイヤをアスファルトの上で使うと、タイヤがすり減りやすいといわれているわけです」(金田さん)。
「靴底が深くて柔らかい靴がない!」というなら、靴用アタッチメントを用意するのも手だ。これは普通の革靴やスニーカー、ハイヒールなどにも装着できる外付けの靴底。スパイクのような金属ピンや、柔らかいゴム質の深い溝が付いているので、これを普段使いの靴に装着するだけで簡易スノーシューズができる。いわば靴用の「タイヤチェーン」だ。ネットなどで1000円前後で売っているので、自宅や会社に備えておけば、突然降ってきた場合でも、ひとまず安心だ。
歩き方よりも、危機意識を保つことが重要
「バランスが崩れないよう、ペンギンのように小さな歩幅で歩くべし!」、「できるだけ小さな歩幅で靴の裏全体を接地するように歩くべし!」――。
雪道での滑らない歩き方として、よく出てくるのがこれらのスキル。もちろん、それぞれ効果的だが、金田さんは「歩き方で一番大事なのは、『気をつけて歩こう!』という“危機意識“です」と指摘する。なぜか?
「札幌市内で雪道での転倒による救急搬送者の数を見ると、北海道一のネオン街である、すすきの周辺が圧倒的に多い。理由は明解で、お酒に酔って『気をつけて歩こう!』という意識が薄れる人が多いから(笑)。危ないと思ったら、人は誰しも自然と転ばないような前傾姿勢を取って、歩幅も短くなり、慎重に歩くものです。滑らない歩き方を知識として持つことはもちろん大事ですが、『転ぶかもしれない』、『慎重に歩かなければ』という意識を忘れないように歩くことがより重要です」(金田さん)。
同じ理由で、滑りたくないなら「スマホを操作しながら歩く」、「駆けるように急いで歩く」といった歩き方も絶対に避けたい。「めっちゃ積もっているからSNSに画像投稿しようっと」、「電車に乗り遅れてしまう! 急がねば!」と、別のところに意識を向けていると、雪道への危機意識がその分、薄れてしまう。それでは“すべリスク”が高まるばかりだ。
その場で撮影してもいいが、SNSへの投稿は、家など雪道以外の場所に行ってからでも間に合う。滑ってころんでケガしたほうが、仕事も会社も大損害。雪道ほど、そんな冷静さを持ち、“危機意識高い系”でいきたいところだ。
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