日本企業の不祥事が相次いでいる根本理由 「企業の社会的責任」の本質を理解していない

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かつて、銀行から借り入れをして、不動産を買いあさり、わざわざ決算を赤字にするという大企業の経営者が存在しましたが、こうした経営者などは、論外として、やはり、赤字は、社会に十分に貢献しない、いわば「罪悪」です。罪悪とまで言うと、やや言いすぎかもしれませんが、適正な利益を生み出し、国家国民のために貢献することを経営者はつねに心掛けなければならないでしょう。

3つ目は「社会に直接的還元するということ」。良品を提供し、税金も正しく納め、なお余力があれば、当然、直接的に寄付なり、あるいは社会的事業を立ち上げるなりして、社会的貢献をすることでしょう。欠陥製品は出す、適正な利益も上げない、それでいて、イベントのスポンサーになったり、寄付をしたり、慈善事業をしたりすることは、社会も求めていませんし、むしろ、反社会的だといってもいいのではないでしょうか。

企業は、いろいろと社会に貢献している面もありますが、時に環境問題、あるいは道路問題、騒音問題など、さまざまに近隣住民や社会全体に好ましからざる影響を与えている場合もあります。また、そうではなくても、社員の家族、その周辺の人たちのことも考える社会性も求められる。それが、「社会的公器」としての自覚であり責任でなければなりません。多くの企業が、そのような活動をし、事業を展開しているのは、そうした「社会の公器」としての役割を自覚しているからだと思います。

要は、「企業の社会的責任とは、完璧な製品をつくり、サービスし、適正な利益を上げ、正しく税金を納め、社会的活動を援助すること」だということです。

大事なことは、これを徹底すること。経営者には徹底する責任があります。そして、法令順守だけでは不足、「人道順守」を前提とすべきです。つねに「誠実に生きていこう」「正しく仕事をしよう」「手を抜くようなことは絶対にしてはならない」「使う人のいのちを預かっていることを自覚しよう」「細部まで配慮、気配りを徹底しよう」などと、経営者は、その責任において繰り返し社員に訴え続けるべきです。

不祥事の全責任は経営者にある

企業の不祥事の全責任は経営者にあります。決して担当者の責任ではありません。そういう「企業の社会的責任」、いや、「人間としての責任」を常々社員に語り、浸透させていなかったその責任を感じるべきです。筆者の造語ですが、大事なのは、Humaliance(ヒューマライアンス=人間順守)なのです。これをCompliance(コンプライアンス=法令順守)以上に浸透させなければならないと思います。

よく、記者会見で「そのことは、担当者がやっていたことで」という実にみっともない発言をする経営者がいますが、「正しい責任、企業の正しい社会的責任を徹底すること、人間として正しい責任を企業風土にすること」が経営者の役割であるとすれば、究極、「社長一人(いちにん)の責任」であると思います。

日本は技術大国だと自称しています。「Made in Japan」がブランドだと自慢しています。筆者は、その慢心が、このところの日本の大企業の不祥事に表れているのではないかと思います。実際に技術大国というならば、スマートフォンやアマゾン・ゴー、あるいはアマゾン・エコーなど、日本が最初でなければおかしいと思います。AIやロボット、あるいは、IoTにしても、日本が先頭に立っているとは言いがたい。シンギュラリティ2045年対応でも、日本は立ち遅れているのではないかと危惧しています。

それにもかかわらず、加えて、もともと日本人が持っていた「誠実さ、確実な品質、信頼性ある製品」が薄れていけば、早晩、日本は水平線のかなたに沈んでいくことになるでしょう。いまほど経営者、社長の果たす責任の大きさが求められているときはないと思います。

日本のすべての企業は、いま一度、「企業の社会的責任」の根本的な見直し確認を求められていることを認識すべきでしょう。

江口 克彦 一般財団法人東アジア情勢研究会理事長、台北駐日経済文化代表処顧問

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えぐち かつひこ / Katsuhiko Eguchi

1940年名古屋市生まれ。愛知県立瑞陵高校、慶應義塾大学法学部政治学科卒。政治学士、経済博士(中央大学)。参議院議員、PHP総合研究所社長、松下電器産業株式会社理事、内閣官房道州制ビジョン懇談会座長など歴任。著書多数。故・松下幸之助氏の直弟子とも側近とも言われている。23年間、ほとんど毎日、毎晩、松下氏と語り合い、直接、指導を受けた松下幸之助思想の伝承者であり、継承者。松下氏の言葉を伝えるだけでなく、その心を伝える講演、著作は定評がある。現在も講演に執筆に精力的に活動。

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