「思ってたことをよ、かっこつけずに思い切り叫ぶと、なんだか疲れがとれるっぺ、それに笑えるっぺ。それがビートルズだ。だから好きなんだ俺は。なんでもいいんだ、難しいことじゃなくていいの。腹立つことでも仕事休みたいでも、あの子が好きだでも今、思っていることを叫ぶんだ」(第13週の78話)
これは個人的には『ひよっこ』台詞大賞。おびただしい数が垂れ流されてきた、日本人による「ビートルズ論」の中でも、もっとも秀逸で本質的なものの1つだと言える。そしてこの台詞が、その後「日本のビートルズ」となった、サザンオールスターズ・桑田佳祐の主題歌と重なっていく。
先に触れたように、有村架純の演技力が『ひよっこ』を支えたのは言うまでもない事実だが、もしこのドラマの俳優に賞を与えるなら、私なら峯田和伸である。それも、第13~14週における爆発的な演技に対しては、「助演賞」ではなく「主演賞」がふさわしいと思う。
これからの朝ドラでどうしても描いてほしいこと
以上、私が思う『ひよっこ』のヒット要因をまとめてみた。これからの「朝ドラ」はどうなるのか。
『わろてんか』『半分、青い』と、近現代史物が続きそうだが、谷田部美代子や小祝宗男のことを思いながら、美代子の台詞に絡めて伝えると、私の「朝ドラ」への思いは、こういうことである――。
「私は、『夢と希望に満ちあふれた、すばらしい時代』を描いてくれと頼んでいるんではありません。そんな表面的な時代論ではなく、ちゃんと実在したであろう、1人ひとりの人間が生き抜いている、具体的な人間論を描いてほしいとお願いしています。1人ひとりの人間には、ちゃんと名前があります。その人は、夢や希望だけではない、歴史の闇の部分ものみ込んで生き抜いたはずです。お願いします。描いてください。お願いします」。
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