2:番組自身による自分ツッコミ=「セルフ・パロディ性」の強さ
『ひよっこ』が秘めていた、ある方向性を具体的に示したのは、第2回、主人公・谷田部みね子(有村架純)の叔父=小祝宗男(峯田和伸)がバイクに乗っているシーンに重ねられた増田明美のこのナレーションである。
「朝ドラには変なおじさんがよく出てきますよね。何ででしょうね?」
これは、朝ドラのナレーションとして、かなり画期的である。「この朝ドラは、普通の朝ドラではなく『セルフ・パロディ=自分ツッコミ』する朝ドラだぞ」という宣言なのだから。
それ以外にも、増田明美のナレーションは、最終回に至るまで、第三者視点からのツッコミで、番組自体をパロディ化していた。また、谷田部みね子と見習いコック・前田秀俊(磯村勇斗)のデートシーンなどは、まるで「昔のドラマのパロディ」のように、意識的に軽薄に描かれていた。
指南役著『「朝ドラ」一人勝ちの法則』(光文社新書、2017)の言葉を借りれば、視聴率的に、「暗黒の中世」(低迷期)を超えて「V字回復」するのは、『ゲゲゲの女房』(2010)だったという。
そこから視聴率がぐっと上がった要因として考えられるのは、まず放送時間を15分繰り上げ、8時開始としたことだ。都市圏における朝型生活へのシフト(記事などで語られる番組視聴率は基本、関東地区のものである)や、他局のワイドショーが8時開始なので、そこに視聴者を取られないようにするという目論見もあったといわれる。
SNSが視聴率アップの鍵になった
加えて、この頃から流行り始めた、ツイッターなどのSNSとの親和性も、「朝ドラ」の視聴率に貢献していそうだ。
普通のドラマ(連ドラ)の視聴率が低迷を続ける中、「週に1度の1時間」ではなく、「毎日の15分」のほうが「オンエア→SNSでの感想共有→オンエア→……」という番組と視聴者を結びつける『絆強化サイクル』がより激しく回転する。その結果、視聴率の確保・獲得に機能すると考えられるのである。
『ひよっこ』の場合、「SNSでここをツッコんでください」と指し示すような、番組自身による「セルフ・パロディ性」が、SNSとの親和性をさらに生かし、その回転に、さらに強く拍車をかけたのではないか。
もっとも、「セルフ・パロディ性」が話題を増幅するというやり方自体は、『あまちゃん』で確立されたものだったが、ただ、その方法論を、臆せず大胆に再活用したところに、ヒットの要因があったと見るのだ。
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