「アメリカン」と呼ばれるように、アメリカで広く飲まれていたのは、薄くて、今ひとつコクが感じられないコーヒーのこと。それがここ十数年の間に、スターバックスの影響で大きく変化した。濃度も風味もしっかりしていて、また豆の産地によって違った風味が味わえるというコーヒーが、スターバックスやそれに類した新しいカフェ・チェーンのおかげで定着したのだ。
だが、その新鮮さも長続きはしなかった。爆発的に広まったスターバックスは、そのうちマニュアル化された店作りや、いつも同じ香りのコーヒーが鼻につくようになった。それでは、まるであのファストフードチェーンと同じ。コーヒーを飲むという時間を、もっとスペシャルなものとして感じたい人々は、ちょうどその頃、芽生え始めたマイクロ・ブリュー・コーヒーに強く引き寄せられたのだ。
まるで、旧きよき時代の日本の喫茶店
マイクロ・ブリュー・コーヒーの特徴はいくつかある。まず、コーヒー豆を厳選すること。最近では、南米やアジアのコーヒー産地まで足を運び、心を込めてコーヒーを育てているコーヒー農場を探し当て、その人々と協力しながらいい豆を育てる。焙煎には心を砕き、それぞれの豆に合った焙煎方法を編み出す。
そして、焙煎後、豆を寝かせておいたりはしない。最長でも3日間。したがって、店頭での売れ行きを見ながら、少量ずつ豆を炒るのだ。
また、豆を挽いてからコーヒー粉をそのままにしておいたりもしない。ブルー・ボトル・コーヒーでは45秒以内に、コーヒー粉に熱湯をたらしてコーヒーを入れるのが決まりだ。
そして、ここがブルー・ボトル・コーヒーの最も大きな特徴だが、1カップずつドリップする。同じマイクロ・ブリュー・コーヒーでもポットに何杯分ものコーヒーを作るところもあるが、ブルー・ボトル・コーヒーのこだわりは1杯ずつ丁寧にドリップすることだ。なぜならば、コーヒーは入れたとたんに香りが抜け始めてしまうから。
ブルー・ボトル・コーヒーにはいつも行列ができているのだが、それは大量生産的ではない、こんなドリップ方式でコーヒーを入れるのに時間がかかるからである。それでも、ここのコーヒーを味わうために、長い待ち時間も苦にしない人々がたくさんいるのだ。
「1杯1杯丁寧にドリップ」と聞くと、何か連想するものがないだろうか。そう、かつて日本の喫茶店で入れられているコーヒーがまさにそれだった。カウンターのマスターが細い口のついたケトルから熱湯を注ぎ、小さいカップに入れてくれるコーヒーだ。実は、フリーマンは日本の喫茶店のコーヒーから、その味わいの大切さを学んだという。
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