電通が狙うO2O、ビッグデータ構想の衝撃 テレビCMと店舗をつなぐ壮大な野望

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現在は、テレビCMを見た人が実際に来店したか、商品を購入したかは測定できない。O2Oと連携しそこが測定可能になれば、電通にとって非常に重要な付加価値となる。

2012年4月、電通は、「BIM(ビジネスインテリジェンス・モジュール)」という組織を立ち上げた。BIMは、クライアント企業に対し、広告出稿の効果を、データを活用してきちんと説明していく役割を担う。

電通の魚住氏

「クライアント企業からマス広告の出稿への投資対効果を、厳しく求められるようになってきた。それがBIMという組織を立ち上げたきっかけだ。マス広告でどれくらいの人がウェブページを閲覧したのか。その結果、店頭に来て、かつ購入してくれたのか。ここの説明をクライアント企業が求め始めたのが、直近2年くらいの傾向だ」と魚住氏は話す。

今、クライアント企業の要求が高くなっているのには、3つの背景がある。ひとつ目に国内市場の拡大が見込めない点、ふたつ目にスマートフォンが登場したことが挙げられる。最後に、ネット上のバナー広告やリスティング広告のように、効果測定(広告のクリック数、サイト閲覧件数、サイト上で商品を購入した履歴などが測れる)ができる手法への認識が広がっている点がある。

「マスメディア、ネットメディア、店頭、購買。一気通貫で、広告の効果をクライアント企業に説明できるような仕組みが必要だ。スマポと連携し、消費者の行動を追跡できれば可能になる」(魚住氏)。

メーカーに、テレビCMとO2Oをセットで提供

メーカーにとっては、O2Oで新しい武器が加わる。テレビCMのクライアント企業の大多数はメーカーだ。メーカーは店舗を持たないため、家電量販店、スーパーマーケットなどと交渉し、棚や売り場スペースを確保する。その交渉の際、新しい武器としてスマポを活用できるのでは、と電通は考えた。

たとえば、飲料メーカーが自社の製品をスーパーマーケットで多く取り扱ってほしい場合。通常、メーカーは「テレビCMをたくさん打つので」とスーパーマーケットと交渉し、売り場を確保する。それが、「当社の予算でスマポの仕組みを設置するので、店舗に売り場を設けてほしい」と働きかけることができるようになる、という。

具体的には、飲料メーカーがスーパーの特設売り場に、スマポの超音波を発生する装置を設置する。テレビCMを見て来店した消費者は、売り場に来ればポイントや特典クーポンがもらえる。

スマポは、超音波を採用しているため、店舗内の特定の売り場まで来店者を誘導することができる。スマポの特徴をうまく活用する仕組みだ。

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