「オーナー経営者」の頭の中を探ってみる 絶対権力者の生態を考察する

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まずは一般的な「オーナー経営者」のイメージを整理することから始めます。

「オーナー経営者」はすべからくワンマンです。朝令暮改は当たり前で、無節操に、時として不条理に振る舞います。自己中心的でわがままにも映ります。自分がこれと思った意見は問答無用で通します。

少し極端な姿ではありますが、一般に「オーナー経営者」はそういうイメージかと思います。そして現実にも多かれ少なかれそういう傾向はあります。うんざりするでしょうか? 人間不信で性格がねじれていると思うでしょうか?

しかしこの振る舞いは、よく考えてみると当然のことだと思います。

なぜなら、オーナー社長は、自分の人生を自分でコントロールすることを宿命づけられている存在だからです。自分が納得しない内容で、失敗して会社がなくなったら何が起こるか。会社における自らの立場だけでなく、自分の人生が破滅しかねません。

持っている資産(株式)は価値がなくなり、残るのは借入金。場合によっては個人あてに保証人として借入金の返済を突き付けられます。時間をかけてちびちびとでも返済できればよいですが、できなければその先に待ち受けるのは自己破産です。

サラリーマンは辞めることで責任を取りますが、オーナー経営者は辞め(られ)ないことで責任を取ります。最終的には私財を投げ出して取る究極の結果責任です。

オーナー経営者のベクトル

そんな恐怖と裏腹であるオーナー社長の行動原理は、組織ではなく自分自身にベクトルが向きます。一方、サラリーマンは、自分自身でなく組織にベクトルが向きます。自分と共にある組織と、組織の中にある自分。双方合理的な判断に基づく「生き残り戦略」です。当然の論理的帰結でもあります。

たとえば重要な意思決定の場で、過去に例のないアクションを起こすのと起こさないのでは、起こしたほうが何かが起こる可能性が高いわけです(当たり前です)。

そして、そのようなアクションを起こした後で会社が大コケした場合、その手前のアクションは原因として吊るし上げられやすくなります。一方で何もアクションを起こさず会社が危機的な状況に陥ったときは、何が原因か誰に責任があるかわかりません。特定できません。

要するに何もアクションを起こさない慎重論を述べるほうが、組織の中での個人の延命につながりやすいわけです。

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