脳神経外科医としては、患者さんの元からなるべく離れず、残業中や休日であっても何か急変があればすぐに駆け付け、緊急処置をいつでも行えるような医師でないと務まらない科目です。
折しも石川医師は、結婚したのが2年前、お子さんが生まれたのが1年前。ちょうど妻や子供といちばん一緒にいたい時期、そのようなタイミングで脳神経外科のハードな研修を行うだけの気力や覚悟が足りなかったのでしょう。
あこがれや興味だけでは務まらない
昨年になりますが、ある医学生向けのイベントで“神の手を持つ”と言われる福島孝徳医師が講演をされていました。かなり集まりがよく、私の知り合いの医学生も出席して大変共感を受け
「私も、脳神経外科医になって有名になります!!」
と息巻いていました。
男性で上昇志向の高い医学生は、医師になることについて夢を大きくもっているケースが多いのです。そのような医師はメディアでよく見る先生や有名な先生に師事したくなる傾向があります。将来のロールモデルを知り、その先生を目標に頑張るという意味では非常によいと思いますが、そう簡単に一流になれるわけではありません。
私も医学生と話していると、大いなる野望を持たれている方にしばしば会います。
よくあるパターンとしては
・発展途上国を中心に世界で良質な医療を提供したい
・福島先生や京都大学の山中教授のような有名な医者になりたい
・医師不足を解消するために遠隔医療システムなどを用いて、新たなインフラを作っていきたい
など。このような目標を持っている方は全体からみると少数ですが、どの世界でも同様、一流の人間になるには、興味レベルではなかなか難しいのも現状です。
普通の医師のロールモデルがない
夢を持つのは大いに結構だと思いますが、今の若い医学生を見ていると、そこに至るまでのプロセスをあまり重視していないような気がします。一流の医師になるためには毎日の地道な積み重ねがとても重要ですが、それが自分にも必要と思うことがない。それよりはこれまでの輝かしい業績や手術数、最新の医療技術ばかりに目が行ってしまい、目の前のやるべきことに集中できない、という傾向があるような気がします。
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