福岡の難病男性が「人とITの力」で見つけた夢 「原発性側索硬化症」との闘いを支えるもの
そんな落水さんが体調の異変に気づいたのは、30歳のときだった。
「何となく歩きづらい気がしたんです。じわじわ変化しているような、でも気のせいかなと思ったり」
当時、落水さんにはPLSに関する知識はなかったが、全身の筋肉が衰えていくALS(筋萎縮性側索硬化症)という難病があることは知っていた。ちょうどその頃、主人公がALSになるテレビドラマ「僕のいた時間」(フジテレビ系)を観ていたからだ。
家族に歩き方の異変を指摘されて病院へ
「オレとめっちゃ一緒やん、と驚き、ネットで調べまくって、オレはALSだなと勝手に思ってました。とにかく最悪の結末ばかりが頭に浮かび、暗闇のどん底で……。家族に『なんか歩き方がおかしくない?』と言われ出して、さすがに病院行かなきゃと。異変を感じて1年近く経っていました。今、振り返ると、自分で気づかないふりをしていたのだと思います。地元の会社に転職して、やっと家族で安心して暮らせると思った矢先でしたから」
2週間検査入院して、痙性対麻痺(けいせいついまひ)という症状名がわかった。しかし病名はつかず、「ALSではない進行性の病気だろう」と告げられた。落水さんには専業主婦の妻と子どもがいる。病気のつらさより、先の生活がいちばん気がかりだったという。
「症状が悪化しても、生活するためにできるところまで粘って働こうと決意しました。営業から事務に変わり、何とか認めてもらおうと必死でした。味方してくれる同僚もいたけど、一部の人の理解を得ることができず、最終的には退職するしかなかった。昨年1月のことです」
PLSと診断されたのも、退職とほぼ同じタイミングだった。PLSは、ALSと症状は似ているが、より進行が遅い病気だ。日本で100人ほどしかおらず、40代後半以降の発症が大半のため、落水さんのケースは珍しい。
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