「名前を書けば入れる」福岡・立花高の教育論

多くの元不登校生が通う私立高校のやり方

不登校だった生徒が多く通う福岡市の私立・立花高校は、生徒をサポートする体制作りに力を注ぐ
福岡市の中心から車で30分ほど、住宅街の高台に校舎が見えてくる。私立の「立花高等学校」だ。実はここへ通う生徒のおよそ8割が、小中学校で不登校を経験。それでも高校へ通いたいという思いで同校へ進学し、独自の教育システムのもとで学校生活を送っている。不登校だった生徒たちはなぜ、立花高校に通うのか。齋藤眞人校長に話を聞いた。

 

学校まで来て、そして名前を書いてくれれば

――「立花高校は、入試で名前を書けば入学できるらしい」。福岡ではずいぶん前から、そんなうわさが広まっています…。

うわさは事実ですよ。本校の生徒の約8割は小中学校で不登校になり、障害のある子もいます。そんな子たちがうちの高校に来たいと頑張って試験を受けてくれる……。優劣をつけることなんて、できませんから。

入試前、お母さんから電話がかかってくることがあります。「入試に私服で行ってもいいでしょうか」と。久しぶりに子どもが中学の制服を着たら、入らなかったそうです。きっと何カ月も、あるいは何年も登校していないのでしょう。外出自体が数カ月ぶりという人だっています。それが親子にとって、どんなに大きな一歩か。私たちはもちろん「私服でどうぞ」とお答えします。来てくれるだけで、素晴らしいじゃないですか。

入試の日、学校前の長い坂道で、緊張のあまり吐いてしまう子もいました。すると、別の子が背中をさすって励ましていました。その光景を見て、胸が熱くなりましたね。当日の朝、「どうしても子どもが家を出ない」という保護者からの電話があれば、前は職員がご自宅まで車で迎えに行っていました。でも、それはやめました。無理して車に乗せるのは違うと思ったから。今は「本人が来ようと思うまで待ちましょう。私たちは来年でもいつまでも待ってますから」と伝えています。

保護者だって本人だって、つらいんです、頑張っているんです。だから入試の日、私たちは祈ります。「頼むから学校に来て、そして名前を書いて」と。そうすれば、あとは一緒にやって行こうという思いでいます。

――どのような成り立ちの高校なのでしょうか。

設立は1957年。「一人の子を粗末にする時 教育はその光を失う」を理念として、当時の教育に違和感を抱いた公立高校の先生たちが、退職金を持ち寄って建学したと聞いています。その後、経営母体や学校名が何度か変わり、1970年代には全校生徒が3人になったことも。それでも「一人の子を大切にする」という理念の下で学校運営を存続し、今では定員を超える520人の生徒が在籍しています。

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