大学生の多くが在学中に就職を決めることができる新卒一括採用は、むしろ若者の雇用を安定させるための装置になっていることは、記事「世耕大臣は誤った先入観で就活を捉えている」で述べた通りである。しかし、現状の新卒一括採用に問題が無いわけではもちろんない。問題は、企業の採用プロセスを歪ませている新卒採用市場の構造にある。一体何が問題なのか、その解決のために何をすべきかを明らかにしたい。
新卒一括採用は若者雇用の安定装置
アメリカでは在学中の学生に対してまったく採用活動しないかというと、そんなことはない。大学側が「キャンパス・リクルーティング」という学内の採用・就職面談会を主催し、そこで内定を決めている。そうした大学は上位の一部大学だけだが、在学中に就職先を決める学生は少なくない。
ただ、アメリカでは景気が悪くなると、途端に学生の採用を控えるようになる。アメリカの大学と企業のネットワーク組織National Association of Colleges and Employers (NACE)の調査によると、リーマンショック前後の大学卒業時点で就職が決まっている割合は、2007年51%、2008年26%、2009年19.7%と極端に悪化している。
日本では、景気が悪くなってもここまで大きな変動はない。ちなみに文部科学省の学校基本調査によると同時期の日本の大卒就職率(卒業者に占める就職者の割合)は2007年67.6%、2008年69.9%、2009年68.4%、2010年60.8%となっている。
景気が悪くなると、政府が経済団体などに学生採用数を維持するように呼び掛ける。企業も景気変動で採用数を大きく上下させることは社員数の世代間バランスを欠き、安定した企業成長にとってマイナスととらえている。出来る限り採用数を維持させようとするところが大手を中心に多く、新卒一括採用はそのためには欠かせないシステムとなっている。
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