しかも、経団連の採用活動に関する「指針」(2015年卒採用までは「倫理憲章」)では、採用広報開始から選考開始までの間に数カ月あり、その間に企業は選考をしてはいけないこととなっている。採用ターゲットではない学生が大量に応募してきても、人気大手企業は門前払いにせずに受け付ける。しかし、学生はせっせと会社説明会に申し込み、エントリーシートを苦労して書くが、選考の時期になるとバサバサ落とされることになる。学校名で自動的に落とされるのであれば、その間の活動はすべて無駄だったということになる。
就職ナビが普及して以来、企業側も落とすための採用活動を余儀なくされている。その結果、何十社も落ちる経験をする学生が大量に生み出されることになった。時間をとられて消耗するだけでなく、社会に必要とされていないと思い込み、引きこもりや鬱を発症する学生を生みだしている。これが最大の新卒採用市場の構造問題である。
一言だけ補足しておくと、こうした状況になることを就職ナビ運営側も意図しておらず、事態を憂慮して、状況改善を試みているように見える。ただ、就職ナビに依存する企業、学生、大学が多い以上、状況は一向に改善していない。
就職実績の公開や大学との連携が求められる
ではどうすればよいだろうか。いくつか改善施策の提案をしよう。
まずは、企業側ができる限り情報公開をすること。指定校制のようにターゲット大学をそのまま公表することは今では難しいかもしれないが、採用実績大学を、採用実数を入れて過去数年分を公表すれば、その企業を受けるべきかそうでないかの判断を学生がすることができるだろう。そうした情報を採用ホームページに明記してほしい。
次に大学就職部、キャリアセンターが企業と連携し、自校の学生を求める企業ばかりが出ている学校別就職ナビを充実させ、学生が大手就職ナビに依存せずとも就職活動ができる環境を整えることである。就職ナビ全盛時代の中で大学就職部、キャリアセンターは企業との関係が薄れ、就職指導のノウハウが薄れたように思う。大学が学生の就職にもっと介在すべきだ。
次に、経団連が設定する一律の選考解禁日は廃止すること。そもそも政府が2016年度採用から採用広報、選考解禁日を遅らせるように各経済団体に提言したのだが、その中で新経済連盟は拒否するなど、足並みがそろっていない。すでにずっと早くから選考を始めている企業はあるわけで、無用な混乱を生む一律の選考解禁日はやめた方がいい。
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