「名前を書けば入れる」福岡・立花高の教育論

多くの元不登校生が通う私立高校のやり方

――立花高校に来たきっかけは?

齋藤眞人(さいとうまさと)/1967年宮崎県生まれ。宮崎県の公立中学校の音楽教員を経て、2004年に教頭として立花高校へ赴任。2006年から校長

私は宮崎の公立中学校の音楽教師で、吹奏楽の顧問も熱心にしていました。それが30代半ば、立花高校の教頭になりませんかと声をかけられたんです。私は宮崎出身で、本校のことは知りませんでしたが、話を聞くうちに心惹かれました。

ちょうど、自分自身の教育実践に疑問を感じ始めていたときでした。自分はこのままでいいのか? 教育は厳しいだけではダメだと。うまくいくときは力じゃない、生徒と心が通ったとき、想像以上のことが起こると実感していたんです。そういう私も、中学では竹刀を持って校門に立ち、あいさつしない生徒がいたら「こら、あいさつせんか」と指導していたんですよ。一生懸命ではありましたが、生徒の思いを顧みない身勝手な教員でした。多くの生徒を傷つけていたことを今でも後悔しています。

2004年に36歳で教頭として赴任し、2年後に校長になりました。学校を改革しようと意気込んで来たわけではありません。すでにやっていることを改めて整理し、プロデュースすることが私の役割だと考えました。

北海道や沖縄、北欧など、国内外の学校へ視察にも行きました。特に北欧では、家族的な学校の雰囲気などに感銘を受けました。学校に癒やしやゆるやかさ、大らかさがある。われわれがやろうとしていることは間違っていないのだと、確信を深めました。

校則では化粧はNGだが……

――着任して何を感じましたか?

それまで経験してきた教育環境とはまるで違いました。中でも、生徒と教職員の距離の近さや考え方にショックを受けましたね。例えば、濃い化粧をして登校する女子生徒がいて、学校のルールでは化粧はNG。だけど、先生たちは「あれは自己防衛やけんね~、あの子は化粧外したら来れんくなるけん、どうしたもんかね~」と話していて、一人ひとりに寄り添う教育って、こういうことだと思いました。

――教育方針に特長はありますか?

立花高校の合言葉は「パイルアップ」。積み上げるという意味で、不登校生徒の自立を支援する体制になっています。その一つは、全日制・単位制・2学期制であること。単位制なので留年がなく、取得した単位はなくならずに何年かかっても卒業を目指せます。また2学期制で春と夏に入学・卒業できるため、他校をやめて本校へ入学したい人が春まで待たずに「入り直す」ことができます。

通常のクラスで授業に参加するのは苦手でも、登校はできる生徒には、1~3年まで混成で生徒の学びを支援するサポート教室があります。ここが居場所となり、元気に登校できるようになった生徒もいます。家庭から学校までのステップとして、「学校外教室」もあります。登校が難しい生徒のために、県内の公民館など5か所に教師が出向いて授業を行い、出席日数としてカウントします。

それから、卒業はしたけれど、すぐに働くのが困難な卒業生をサポートするために、NPO法人を作りました。以前からお弁当屋さんで卒業生が働ける仕組みを作っていましたが、今年からこのNPO法人が校内でカフェラウンジを営業し、そこで働いてもらっています。ここで自信がついたら、社会へ出て働いてほしい。また、社会福祉法人と業務提携して、学校の敷地に作業所を開所し、卒業生の自立訓練にも取り組んでいます。

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