福岡の難病男性が「人とITの力」で見つけた夢 「原発性側索硬化症」との闘いを支えるもの

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「こんな病気になった僕だからこそ伝えられることがある。だから今、話せるうちにたくさんの人に聞いてほしいんです」と落水さんは力を込める。

そして、言葉を続けた。「僕は20代の頃、美容業界で営業をしていました。熊本地震のあと、いてもたってもいられなくて、知り合いの美容師さんたちと熊本にボランティアカットに行きました。僕は受付係で、車いすに座っておじいちゃんおばあちゃんと話していると、ひとりのおばあちゃんが『私は戦争で家族全員亡くし、今回の地震で家がなくなった。人間生きていたら、明日、何が起こるかなんて誰にもわからない。だから今を大切に、今を楽しくね』と声をかけてくれた」

「今」を大事にしないといけない

「本当にそうだなと心にしみました。言い方がおかしいかもしれないけど、僕の時間は確実に限られている。今を大事にしないといけない。だから、今は呼ばれればどこへでも行くし、求められることがものすごくありがたい」

徐々に病気が進行する過酷な環境で、どのようにして家族で生活するための収入を確保するか。それは継続的な課題だ。ただ、今の落水さんには、親身になってくれる仲間がたくさんいる。病気が判明した直後と今とでは、「自分から動いたことで、出会いに恵まれ前向きになれた」と心持ちも好転した。

「これから1年くらいで、この先どうやって収入を得ていくか道筋をつけたいですね。最近、熊本の被災地支援のために、ボランティアカットの仲間と共に、シャンプーとトリートメント製品(ヘアーイズエナジー)をクラウドファンディングで開発しました。僕は前職の知識と人脈を生かして商品開発を担当し、今は営業や広報活動をしています。もともとチャリティ目的で作った商品ですが、将来的には利益を出せるものにして、熊本の支援も継続していきたい。また、今回の経験を生かして、新商品を作りたいと考えています」

とても明るくさわやかに話す落水さん。彼のブログにはすてきな笑顔と仲間があふれている。だが、病状の進行は予想以上に早いらしく、自宅では手すりに体重をかけ、とてもゆっくり移動していた。負担をかけないように短時間で取材するつもりだったが、気づけば1時間以上にわたって率直に話を聞かせてくれた。
最後に撮影のため外出する際に、落水さんは眼鏡をかけた。聞けば視力が少し悪く、外出時にはかけるのだとか。「たくさんの方に励ましてもらっているのに、相手に気づかないと失礼ですから」と落水さん。取材中にも、言葉の端々から人への気遣いや感謝が感じられた。そんな誠実な人柄だからこそ、多くの人の応援を得ているのだろう。
佐々木 恵美 フリーライター・エディター

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ささき えみ / Emi Sasaki

福岡市出身。九州大学教育学部を卒業後、ロンドン・東京・福岡にて、女性誌や新聞、Web、国連や行政機関の報告書などの制作に携わる。特にインタビューが好きで、著名人や経営者をはじめ、様々な人たちを取材。

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