3月15日、ドナルド・トランプ米大統領による新たな入国禁止令に対して、ハワイのホノルル連邦地裁が発効の一時差し止めを命じる仮処分を出した。その決定は全米で適用される。トランプ大統領が新大統領令に署名したのは3月6日だった。
発効までに10日間の猶予をもたせ、16日発効の予定だったが、その前日の15日に執行差し止めとなった。この決定に対して、トランプ大統領は同日の南部テネシー州ナッシュビルでの演説で「前例のない司法の行き過ぎだ。米国を弱くみせる」と反発、必要なら最高裁まで争うという徹底抗戦の強い姿勢をみせている。
2度も差し止め命令を食らう
今回の新大統領令は、1月27日に署名、同日に発効させて混乱を招いた旧大統領令を一部修正したものだ。中東・アフリカ7カ国のうちイラクを対象国から除外して6カ国とし、米国の永住権(グリーンカード)や入国査証(ビザ)を持つ人は入国できると明記した。6カ国からの入国は90日間禁止され、難民の受け入れは120日間停止するというもの。
旧大統領令に対しては、ワシントン州のボブ・ファーガソン司法長官が直ちに無効にするよう提訴し、2月3日、シアトル連邦地裁が執行停止の仮処分を出した。その決定は全米で有効となり、サンフランシスコ連邦控訴裁もその決定を支持した。トランプ大統領は激怒し、最高裁に上告すると息巻いたが、結局、上告せず、一部修正した新大統領令を差し替える形で、新たに出すことにした。ところが、その新大統領令に対して、今度はホノルル連邦地裁が、またしても全米における執行停止を命じる仮処分を決定した。
こうした二度の差し止め命令を受けたことは、トランプ大統領にとって「痛烈な一撃」(ニューヨークタイムズ紙)であり、トランプ政権にとって大きな打撃となるという見方がリベラル派のメディアには多い。つまり、内容を少し変えたからといって、同じような中味の大統領令を連発するというのは、何とガサツで、手際の悪いことか、まるで法律テクニックのない、ほとんど無策に等しい内容と批判されても仕方ない。そんな大統領令をなぜ出したのか。
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