3月29日、ユニクロの柳井正会長兼社長はニューヨークで記者会見し、トランプ政権が進めている税制改革について言及した。国境調整による輸入関税を課し、個別企業に米国内での生産を求めるような要請があれば、「ユニクロはアメリカから撤退する」というのだ。
この発言を米メディアは「日本の超大富豪がトランプ大統領を脅した」と大きく報じた。これは、今後の日米関係にどのような影響を与えるだろうか。タイミングとインパクトについて考えてみよう。
トランプ政権に与えるインパクトは?
トランプ政権に与えるインパクトはプラス・マイナス両面ある。3月24日、トランプ政権はオバマケア(医療保険制度改革)代替法案を撤回した。それは政治的大失敗だった。
その失地回復を狙って、もう1歩先の目玉であるはずの税制改革法案の審議を急ぐ戦法をとった。柳井発言はそういうタイミングで飛び出した。人々の関心がオバマケア代替法案撤回に対する不評から減税法案に移るのに効果的なタイミングになったとすれば、プラスのインパクトといえる。
オバマケア代替法案はトランプ大統領が本格的に取り組んだ最初の法案。その法案が下院採決寸前に撤回に追い込まれた。これによってトランプ政権が負う痛手は大きい。先の移民規制に関する大統領令の挫折よりも政治的ダメージは深刻といえる。政権としては、その責任をトランプ大統領に負わせるわけにはいかない。スティーブン・バノン首席戦略官・上級顧問の判断により、責任はポール・ライアン下院議長に全面的に押しつけられることになった。
ライアン氏が責任を負わされることになった理由は2つある。
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