非エリートでもハイパーノマドになれる ハイパーノマドになるための〈居場所づくり〉
答えは簡単だ。アンチノマド派は心の中では、場所に縛られずに働くノマドに嫉妬していて、彼らの反論はすべてそこから出てくるからである。ノマドを「カフェで仕事をする迷惑な人」などと議論を矮小化して批判する人などは、まさにその典型であろう。
実際、どこでも働ける環境を得たら、これほど快適なことはない。通勤時の満員電車に乗る必要もないし、平日に仕事をしながら、ぶらりと旅行だってできてしまう。温泉入りながら仕事をこなすって、最高ですよ。ノマド万歳! みんな会社辞めてノマドになろう!(ただし、ノマドになれる人に限る)。
いや、ちょっと待てよ。もちろん、事態はそれほど単純ではないのだ。
望むと望まざるにかかわらず、誰もがノマドになる時代
経済学者のジャック・アタリは、将来、誰もがノマドになると書いた。ノマド論が注目されたのは、このアタリの指摘からだろう。国家のプレゼンスが低下していく中で、人々は簡単に国境を越えて移動し始める。海外移住や国際結婚も当たり前になった。
この流れを受けて、企業もまた、ノマド化していく。具体的には、本社が海外移転したり、人材が国境を越えて移動したりしていく。どの国の企業なのかわからなくなっていくのだ。たとえば大石哲之氏は『ノマド化する時代』において、アクセンチュアが本社をアメリカからバミューダ、そしてアイルランドへ、まさに世界を遊牧するように移転させたことを例に挙げている。大石氏の考察は鋭く、個人から組織まで、さまざまなレイヤーでノマド化が進んでいることを、豊富な取材も交えながら紹介している。ノマドを語るのであれば欠かせない好著である。
ここに最近の事例を加えるとすれば、先日、ユニクロを展開するファーストリテイリングが行った世界同一賃金を導入するという発表もまた、企業のノマド化現象のひとつであろう。社内ではもはや国境は存在せず、国を超えて共通のルールや賃金体系が適用されるのである。
こうした中、望むと望まないとに関わらず、誰もがノマドにならざるをえない。この意味で、アンチノマド派もノマド肯定派も、事態を見誤っている。「ノマドを勧めるな」とか「いやいや、選択肢のひとつだ」といった、ノマド以外に選択肢があるような言い方は見当違いだ。望むと望まざるにかかわらず、誰もがノマドになる時代が到来したのだ。
ハイパーノマドと下層ノマドを分けるもの
ノマドと一言で言っても、さまざまだ。アタリは、ノマドには3種類あると指摘する。まずは、世界を股にかけて活躍する、クリエイティブな能力を持ったハイパーノマド。彼らはその能力を買われて、国境を越えて移動し、成功を収める。
対極にあるのが下層ノマド。こちらは、国内では仕事が見つからず、生きるために移動を強いられる層。今でもすでに、多くの海外地域において、日本から社員を派遣、駐在させるのではなく、日本人の現地採用が行われている。
そうした現地採用の社員に対しては、現地の生活水準に合わせた給与しか支払われない。こうした下層ノマドも、今後、増えていくだろう。いや、数年後、これを読んでいるあなたがそうなるかもしれない。
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