なぜ「ノマド批判」がなくならないのか?

ノマド批判と「中島みゆき」

前回も触れたように、ノマド化の流れは止めようがない。マクロな視点からみれば、人類が獲得してきた移動の自由、居住移転の自由、職業選択の自由、経済活動の自由といった先にある歴史の必然である。短期的な揺り戻しはあったとしても、長期的には議論の余地はない。

ここ数十年をみても、国境という制約は基本的に低くなってきている。海外旅行は当たり前になり、より多くの外国人が住み、働く環境が広がっている。(近年減少傾向にあるとはいえ)ここ数十年をみれば国際結婚も飛躍的に増えている。もちろん局所的には労働ビザが取りにくくなったりといったこともあるが、基本的な傾向は変わらない。

前回も紹介したように、ジャック・アタリはこうした先の未来に、3つのノマドの相克を描き出す。そこで目にするのは、超帝国化した企業が下層ノマドを食い物にする世界である。下層ノマドとは、国境を超えて職を求めざるをえない層である。国家を超えた存在となる企業が、下層ノマドを低賃金で働かせ、莫大な富を得るという構造である。下層ノマドは働き口を求め、大都市へと雪崩れ込む。ちなみに、この超帝国を操るのがハイパーノマドである。

この下層ノマドの流入によって影響を受けるのが、定住層であるバーチャルノマドである。彼らは下層ノマドの流入によって賃金が引き下げられていく。アメリカやヨーロッパなどにおける移民の問題などが該当する。ハイパーノマドにあこがれながらハイパーノマドになれず、下層ノマドにその地位を脅かされる。それがバーチャルノマドである。

不安からハマるバーチャルノマドの気晴らし

アタリのバーチャルノマドに対する視線は、(ほかの2つもそうなのだが)かなり辛辣なものである。彼らが行う対応は、リスクに備えることと気晴らしであり、それはさまざまな分野をカバーする保険に加入することと、ハイパーノマドの生活を模倣できるような娯楽にハマることなのである。

アタリが具体的に描き出すのは、過去のエリートたちが興じてきた単独競技(乗馬、ゴルフ、ヨット、ダンスなど)に熱中したり、「オンラインで選手にヤジを飛ばしながら、サッカーの試合に没頭する」(『21世紀の歴史』)姿である。最後の一文は、ツイッターでつぶやきながらの自宅観戦を思い浮かべる人も多いだろう。

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