なぜ「ノマド批判」がなくならないのか? ノマド批判と「中島みゆき」

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ノマド批判と中島みゆき

こうしたノマド批判で思い出すのが、中島みゆきの『ファイト!』という曲である。最近もテレビCMで満島ひかりが歌っていたので、耳にした人も多いだろう。この曲の3番の歌詞では、地元の束縛と戦う者の姿が描写される。地方から上京する主人公に向かって、出て行くのであれば身内も住めないようにしてやる!という呪詛が投げつけられるのだ。そして、それでも捨てることのできなかった東京行きの切符が描写される。中島みゆきの描く地縁、血縁のしがらみのおそろしさに身震いする。

地縁が崩れていく中で、地縁から飛び出そうとする若者を呪う。ノマド批判にも同じものを感じる。企業という束縛から逃れようとする若者を支援するのか批判するのか。その人の立ち位置が問われるのだ。

地域を復興させるノマドたち

誤解してほしくないのは、私が閉鎖的な地方のあり方を否定し、都市化すべきだと言っているわけではない。むしろ地方がもう一度、それぞれ多様なかたちで活性化していかなければならないと思っているし、そういう取り組みにも参加している。東日本大震災では、石巻でさまざまなご縁をいただき、NPO石巻復興支援ネットワークを通じて復興起業家の支援をさせていただく機会もあった。

しかしこうした活性化は、決して過去の状態を復旧することではない。石巻もかつては、港町として非常に栄えた時代があった。そうした時代を回顧して定住者を閉鎖的に囲い込むのではなく、外からのノマドを受け入れ、その風を受けて多様な表現を行っていく。それが今の地方が進んでいる復興のかたちである。

復興起業家のひとり髙橋正祥さんは、葉山から石巻に移り、ハイブリッジというダイビングサービスを始めた。海の清掃や遺留品の捜索といったボランティアを続けながら、地元の漁師さんとも連携し、ひとりでも多くの人に石巻の美しい海を知ってもらおうと活動している。石巻はそれまで、海に面しているその立地にもかかわらず、ダイビングを楽しむ人は多くなかった。高橋さんが来たことによって、ダイビングの楽しみを知った地元の人も少なくないという。

ハイブリッジが主催・運営する石巻海さくらの活動。 海の清掃活動を行なっており、今でも毎回、たくさんの瓦礫を 引き上げている。
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