世界中で患者数が拡大している不妊症。一般に、2年以上避妊なしで性交しても妊娠しない場合、不妊症と診断される。
どの国でも、不妊症を抱えるカップルが、10~15%の割合で存在するといわれる。ただし日本の場合、“晩婚化”と“晩産化”が不妊を深刻化させている。2011年には、女性の平均初婚年齢が29.0歳まで上昇。新生児の約6割は、30代のママから生まれているのだ。
「今、体外受精などの不妊治療を受けている人の約9割は、10年前に子どもを作ろうとしていれば、自然に妊娠できていたのではないか」と慶応義塾大学医学部産婦人科の吉村泰典教授は指摘する。
ここ数年、人口の多い団塊ジュニア世代が40代に差しかかる中、不妊クリニックの患者が急増している。現在、日本において不妊治療を行う病院・クリニック数は約600件に上る。これは、米国の500件弱、中国の約300件を上回る世界一の数字である。
さらに、体外受精、顕微授精などの高度生殖医療(ART)の治療件数でも、日本は年間21・3万件と世界トップとなっている。2009年には、ARTにより2.6万人強の赤ちゃんが生まれた。今や「新生児の40人に1人は体外受精児」という時代が到来しているのだ。
同時に、不妊治療は巨大産業へと成長している。ARTにかかる費用を1回40万円として計算すると、それだけで市場規模は852億円。そのほか人工授精、診療費などを含めると、不妊産業の規模は優に1000億円を超えるだろう。
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