実際、“19歳一点集中”は有効に作用した。ふたを開けてみれば、「雪マジ」会員になった8割は「口コミ」経由だった。学校やバイト先など、同世代とのヨコのつながりが強いこの世代を、がっちりとらえたのだ。
想定を超えていたのは、自分が行くだけでなく、人を“誘う”きっかけとして広がっていったことだ。雪山にハマった若者たちは、一緒に雪山の楽しみを味わう人を増やしたいと、おのおの雪山の輪を広げようと動き出した。
自然に“コアなインフルエンサー”となった人々は、「雪マジ」をブログで紹介し、SNSで専用コミュニティを立ち上げ、“「雪マジ」旅行の企画”まで作るようにまでなった。
「雪マジ」2年目の今シーズンは、その動きを基に、新たな仕掛けを作った。昨年会員になった若者が、今年19歳の5人に「雪マジ」を紹介し会員になったら、紹介した当人にもリフト券1枚をプレゼントすることにしたのだ。このアイデアはヒットし、会員数は初年度の2倍の12.5万人にまで膨れ上がった。
こうした結果に、当初は反対していたスキー場経営者たちも反応した。2年目、「雪マジ」に参加するスキー場は、前年の1.5倍以上の全国136カ所と大幅に増加した。
加藤は、すでに「雪マジ」の先を見据えている。雪山にとどまらず、若いうちに豊かな消費体験をしてもらう、というのだ。
「バブル世代がいつまでも消費に意欲的なのは、若い頃にあらゆる楽しい経験を享受できる環境にあったから。だから、今の若者たちにも、お金がない時期でも消費や遊びを体感できるような、きっかけを作りたい。ゆくゆくは、それをプラットフォームとして育てていきたいのです」
”チャリンチャリン・ビジネス”からのスタート
こうしたユーザー目線でのサービスは、加藤のこれまでの経験で培われたものだ。ひとつは、リクルート初の宿泊予約サイト「じゃらんnet」の立ち上げ時に学んだ。
今や、100人のスタッフが稼働し、リクルートの屋台骨ともなっている「じゃらんnet」だが、2000年当初のメンバーは加藤含めたったの4人。当時は、まさにネットビジネスの黎明期だった。SEO対策やリスティング広告、ユーザーインターフェースの設計など、当時はその言葉すらなかったものを、手探りで実践していった。
大きな実験のひとつが、トランザクション課金という成果報酬型の課金モデル。早くからネットビジネスに進出していたリクルートにとっても、当時、初めての試みだった。
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