また、「雪マジ」は研究プロジェクトのひとつで、会社のメインミッションでもなく、特別な予算もない。そこで加藤は、社内のTV会議を使って、『じゃらん』で雪山の地域を担当する営業担当者およそ100人に向けてキックオフイベントを開いた。
このプロジェクトは痛みを伴うかもしれないが、落ち込みの激しいスキー業界はもとより、日本の地場産業を盛り上げていくという大きな目標がある。そう、加藤は切々と語りかけた。
ここでも賛同してくれるスキー場経営者に出演してもらい、現場の生の声を届けたことも、社員たちの心を動かした。
「もともとリクルートには熱い性格で、顧客本位の営業マンが多いんです。だから経営者らの声によって、彼らはさらに奮起し、歯を食いしばって頑張ってくれたんです」
予算がないなか、告知にも工夫を凝らした。なんと、霞が関の記者クラブで、当時の観光庁長官・溝畑宏氏、星野リゾートの星野佳路社長など、そうそうたるメンバーが同席する記者会見を開いたのだ。
「星野さんは、うちの社長に頼み込んで紹介してもらいましたね。こうした方々が会見で並んだら、大きなフックになるし、響く層も多いと思ったので」と、加藤はさらりと語る。会見当日、星野社長は自ら調達した「19」の数字の入ったTシャツを着て登場するという機転も利かせてくれ、会見は盛り上がった。
その模様は、いくつもの全国紙やテレビ番組で紹介された。こうして、「雪マジ」は費用をかけずして、全国にその存在を知らせることができたのだ。
19歳限定のワケ
ここまで読んできた読者の中には、「なぜ19歳限定?」と思われた方も多いだろう。まさに、それこそが、加藤の狙うところなのだ。
19歳限定の理由のひとつは、スキー場の収益が減るリスクを抑えるためだが、もうひとつは、“広告屋”としてのカンだ。
情報過多の今、発信する側で絞り込みをかけなければ、情報はターゲットに到達しないと加藤は言う。若者に関していえば、「SNSでの友達のお勧めや、人気ランキングなどを通して、自分に必要な情報だけを知りたいと思っている」(加藤)。
“19歳のあなた”と限定して訴求すれば、その年齢の人は振り向くし、「なぜ19歳?」という興味も持ってくれる。
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