マイナス30℃、極寒の大地で1人、玉ねぎの種まきをする日本人――。
中国甘粛(かんしゅく)省は、シルクロードに位置する砂漠地帯。現在も飛行機は1週間に1本しか便がないような僻地だ。超がつくほどの乾燥地帯、しかも2月の寒さで、玉ねぎは本当に育つのか?
「玉ねぎはもともとアフガニスタン原産。中央アジアから欧州、米国、アジアと世界を1周旅行して日本に伝わった品種。だからシルクロードの厳しい気候が、実はいちばん適しているんです」
野菜のことを語らせたら止まらないこの男の名前は、柚木英明(38歳)。スナック菓子最大手・カルビーが2012年に全国発売を開始した野菜チップス「Vegips(ベジップス)」の生みの親だ。
柚木はベジップスの開発から原料の調達、マーケティングまで、すべてを文字どおり“たった1人”でやってきた人物。新商品開発のためなら、単身、中国の秘境でもどこにでも出向く、徹底した味へのこだわりと行動力。それが数々の逆風を突破し、ベジップスを年商30億円のヒット商品にまで育て上げた。
じゃがいも以外のルートは、すべて自分で開拓
ベジップスは、玉ねぎやかぼちゃなどの野菜を、そのままフライしたスナック菓子。現在、緑と赤のパッケージ、2種類を販売している。
12年に全国発売が始まると、野菜本来の自然な甘みを残した味や、ヘルシーなイメージが女性を中心に評判を呼び、一部地域で販売中止になるほど売れに売れた。11年の売上高は12.3億円、12年はさらに年商30億円に成長する見通しだ。
ベジップスの開発が始まったのは05年。別の食品メーカーに勤めていた柚木が、カルビーに転職した時期と重なる。
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