カルビー、たった1人で30億円を稼ぐ男

「ベジップス」を売るため、開発屋は“進化”した

柚木は子供の頃からサッカーと、何よりも食べることが大好きで、大学では食品工学を専門として大学院の博士課程まで進学。その後、横浜のとある食品会社に引き抜かれ、博士課程を中退。新商品開発に携わっていたが、新たな環境を求めてカルビーに転職したばかりだった。

ベジップス開発チームの最初の職場は、宇都宮のR&DDEセンター(研究開発本部)。開発チームといっても“玉ねぎ担当”の柚木、“かぼちゃ担当”の男性のたった2人だけ。新商品開発は「当たれば」の世界。100個に1個、10年に1度でも当たりが出るかもわからない世界だから、1人や2人で始まるのは珍しくないという。

「宇都宮にあるイトーヨーカドーや近所のスーパー、八百屋さんで野菜を買ってきては、『釜揚げ』をするという研究を日々繰り返しました。

そこで、おいしい野菜を見つけたら種苗メーカーさんに電話をかけて、産地を聞いたら、今度は地方のJAに行って品種を見て……」。すべてはベジップスに合う理想の品種を探すため。ひたすら何年間もかけて野菜の産地を巡った。

柚木がここまで野菜にこだわったのには理由がある。ベジップスは野菜本来の風味を損なわないように“野菜と塩、植物油のみ”を使用していることをウリにしている。

用いるのは、業界では異例の“素揚げ”製法。素揚げをすれば、野菜本来の味がそのまま出てくるからだ。裏を返せば、マズいさつまいもを使えば、マズいさつまいもチップスになってしまう。そのため原料の野菜の味が、すべてを決める。

柚木が日本中を駆けずり回って探し当てた品種は、日本で一番の品種。「たとえばかぼちゃ1つ見ても、“ほっこり系”とかいろいろあるんです。その中でも、病気に強いことがとっても重要。あとは収量も取れなければ、コストにかかってくる。ただ、もちろん味が一番なので、そこが決め手です」。

カルビーはじゃがいもには強かったが、かぼちゃやさつまいもなどのノウハウはほとんどない。ベジップスに使われる野菜調達のルートは、すべて柚木が1人で開拓した。

電話1本、中国の秘境に押しかける

国内で理想の品種を見つけた柚木は、海外での原料の栽培を検討し始める。収穫時期を分けるための産地分散や、原価を考えると、日本の品種を海外で栽培する必要があったからだ。

05~07年の開発初期、柚木は中国で日本の品種を栽培する種苗会社の協力も得ながら、栽培地を求めて単身、海を渡る。

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