ディズニーの新作は日本のゲームを意識した ディズニーアニメプロデューサーに聞く

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――とはいえ、ゲーム会社にその都度、チェックをしてもらうのは大変だったのでは?

確かに大変だった。ムーア監督のOKが出た映像素材をゲーム会社にチェックしてもらい、返ってきたコメントを基に修正する。そしてそれを監督に戻し、再びゲーム会社にチェックしてもらう、といった具合に2倍の手間がかかるわけだから、作業時間もおのずと増えてしまう。しかし、それでもキャラクターを忠実に描くためには、どうしても必要なやり方だった。

ディズニーで起きた意識改革

――2006年にディズニーが、CGアニメスタジオのピクサー・アニメーション・スタジオを買収したことで、『トイ・ストーリー』などで知られるジョン・ラセターが、ウォルト・ディズニー・アニメーション・スタジオのチーフクリエイティブ・オフィサーに就任しました。そこからのディズニーアニメは明らかに変わったように思われるのですが、何か意識改革などがあったのでしょうか?

クラーク・スペンサー 
CLARK SPENCER
ハーバード大学卒。過去20年以上にわたりウォルト・ディズニー・アニメーション・スタジオの幹部として、財務・運営から映画製作まで、様々な役割を担う。初めて製作を務めた映画『リロ&スティッチ』(02)は、大ヒットを収め、キャラクターたちも人気を得て、ディズニーの人気キャラクターとして定着した。その後も、『ボルト』(08)のプロデューサー、『ルイスと未来泥棒』(07)、『くまのプーさん』(11)の製作総指揮として活躍。『リロ&スティッチ』(02)と『ボルト』(08)はアカデミー賞長編アニメーション賞にノミネートされた。

ジョン・ラセターが来て、変わったことが2つある。当時のディズニーは、興行成績がふるわずに自信を失っていたんだが、まず彼が言ったのは「君たちは自信を持たなければいけない。自分自身のことを信じないといけない」ということだった。これは非常に簡単そうに聞こえるかもしれないけど、実はすごく難しいこと。でもジョンが来て、意識改革をもたらしてくれた。

それからもうひとつは、スタジオの中にあった壁を崩してくれたということ。それまでのウォルト・ディズニー・アニメーション・スタジオでは、それぞれのクリエーターたちは、自分がかかわっている作品についてだけ考えていればよかったが、ジョンは「そうじゃない。みんなで責任を持って、お互いの作品をよくしていこう」と提案してくれた。

たとえば、ある監督の作品の試写会をやるときには、ほかの作品を制作中の監督たちも来てもらうようにした。それから4~5時間ほど、出来上がった映像を観ながらみんなで意見を出し合う。そうやって受け取った客観的な意見をフィードバックすることで、作品を練り直す参考にもなる。それはとても大事なプロセスだと思う。

やはり批評は大事。けなすとか個人攻撃をするということではなく、客観的な批評は長期的に見て、作品をよくする方向に貢献する。ジョンがもたらした意識改革のおかげで、スタジオの雰囲気もよくなったし、コミュニケーションも潤滑になり、風通しもよくなった。

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