――とはいえ、ゲーム会社にその都度、チェックをしてもらうのは大変だったのでは?
確かに大変だった。ムーア監督のOKが出た映像素材をゲーム会社にチェックしてもらい、返ってきたコメントを基に修正する。そしてそれを監督に戻し、再びゲーム会社にチェックしてもらう、といった具合に2倍の手間がかかるわけだから、作業時間もおのずと増えてしまう。しかし、それでもキャラクターを忠実に描くためには、どうしても必要なやり方だった。
ディズニーで起きた意識改革
――2006年にディズニーが、CGアニメスタジオのピクサー・アニメーション・スタジオを買収したことで、『トイ・ストーリー』などで知られるジョン・ラセターが、ウォルト・ディズニー・アニメーション・スタジオのチーフクリエイティブ・オフィサーに就任しました。そこからのディズニーアニメは明らかに変わったように思われるのですが、何か意識改革などがあったのでしょうか?
ジョン・ラセターが来て、変わったことが2つある。当時のディズニーは、興行成績がふるわずに自信を失っていたんだが、まず彼が言ったのは「君たちは自信を持たなければいけない。自分自身のことを信じないといけない」ということだった。これは非常に簡単そうに聞こえるかもしれないけど、実はすごく難しいこと。でもジョンが来て、意識改革をもたらしてくれた。
それからもうひとつは、スタジオの中にあった壁を崩してくれたということ。それまでのウォルト・ディズニー・アニメーション・スタジオでは、それぞれのクリエーターたちは、自分がかかわっている作品についてだけ考えていればよかったが、ジョンは「そうじゃない。みんなで責任を持って、お互いの作品をよくしていこう」と提案してくれた。
たとえば、ある監督の作品の試写会をやるときには、ほかの作品を制作中の監督たちも来てもらうようにした。それから4~5時間ほど、出来上がった映像を観ながらみんなで意見を出し合う。そうやって受け取った客観的な意見をフィードバックすることで、作品を練り直す参考にもなる。それはとても大事なプロセスだと思う。
やはり批評は大事。けなすとか個人攻撃をするということではなく、客観的な批評は長期的に見て、作品をよくする方向に貢献する。ジョンがもたらした意識改革のおかげで、スタジオの雰囲気もよくなったし、コミュニケーションも潤滑になり、風通しもよくなった。
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