なぜ日本の女性はディズニーが好きなのか ウォルト・ディズニー・ジャパン ポール・キャンドランド社長に聞く

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ディズニーにとって「世界のアンテナショップ」といえる店が千葉県柏市にある。初めての若い女性向け店であり、坪当たり売り上げは世界トップクラスだ。なぜディズニーは「世界のアンテナショップ」を日本に創ったのか。ウォルト・ディズニー・ジャパンのポール・キャンドランド社長にその理由を聞いた。
1958年米国生まれ。94年沖縄ペプシコーラ社長、98年日本ペプシコーラ社長。同年11月に代表取締役としてディズニーストア・ジャパンに移り、2002年からテレビ部門を統括。07年6月から現職。

関連記事:日本発の大人戦略 ディズニーストアが復活

日本の消費トレンドは世界に伝播する

日本の女性はなぜディズニーが好きか、いつも聞かれる。僕はハートが若いからだと思う。40~50代でも気持ちが若い。そのうえ、どんな世代でもディズニーとの思い出を持っている。ディズニーのブランド定義は「エンターテインメント・ウィズ・ハート」。ディズニーストアも単なる小売業ではなく、エモーショナルなビジネスだ。

大人戦略のきっかけは、2000年代初頭。僕は当時ストア部門を統括しており、若い女性をターゲットにしたら売り上げが2割以上伸びた。実際にゲストの喜ぶ顔を見て、体験していることが大きい。

実際には約3年前、ユニクロなどファッションのライセンス商品からスタートした。時間がかかったのは、クリエーティブ能力の開発に力を注いだから。僕は社内で「すべてはクリエーティブからスタートする」と言っている。パートナーの力も借りながら、日本人のための独自コンテンツを開発する。5~6年前、クリエーティブブック(デザインコンセプトを示した冊子)はすべて米国製だったが、昨年は日本独自で80冊も発刊した。

大人戦略はストアだけでなく、テーマパークや携帯電話などでも手掛けている。昨年3月開局したBSチャンネル「D-life」は30~40代女性がメインターゲット。ゲストはディズニーを「360度体験」できる。こうした部門間シナジーも、ディズニーの強みだ。

YAF(18〜29歳の女性)向け店舗は世界初の取り組みだったが、米国本社とのやり取りはとてもスムーズだった。米国本社も、日本の大人戦略を理解している。今後は欧米や中国でも高齢化が進む。その点で日本は先端事例であり、日本で試すことがディズニー全体の戦略の参考になる。

日本の大人戦略は世界の先駆けだ。バリュー・フォー・マネーやハートの若さなど、日本と似た消費トレンドが他国でも出てくることは間違いない。

(撮影:今井康一) (週刊東洋経済2013年2月9日号)

並木 厚憲 東洋経済 記者

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なみき あつのり / Atsunori Namiki

これまでに小売り・サービス、自動車、銀行などの業界を担当。テーマとして地方問題やインフラ老朽化問題に関心がある。『週刊東洋経済』編集部を経て、2016年10月よりニュース編集部編集長。

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