“WBC最強打線” ドミニカ強さの秘密

現地取材で探る、メジャーリーガー輩出工場の全貌

一方、せっかく『東洋経済オンライン』で語るのだから、野球的見地以外からも眺めたい。注目してほしいのは、今回のWBCに出場した全16カ国の国内総生産(GDP)。ドミニカは同じカリブ海のキューバ、プエルトリコを下回り最低なのだ。

 一般的に、GDPの高い国ほどスポーツが盛んで、強い傾向にある。一言で説明するなら、強化に使えるお金が豊富にあるからだ。ただ、ドミニカの野球に限っては、その法則は当てはまらない。むしろ逆で、GDPの低さと野球の強さに密接な結びつきが見て取れる。

たとえるなら、ドミニカ野球はこう表現できる。「サッカー界におけるブラジル」であり、「経済界のケイマン諸島」だ、と――。

契約料は2億円を超えることも

2月8日、ドミニカのプロ球団であるエスコヒードとリセイがともに本拠を構えるエスタディオ・キスケジャを訪れると、興味深い光景に出くわした。スタジアム周辺にある砂利の敷地で、少年たちがストリートベースボールに興じているのだ。

少年バッターが左中間を突破するヒットを放つと、古びた段ボールで代用されたセカンドベースに滑り込んだ。砂利の上だが、恐れる様子は微塵もない。

かつて、シカゴ・ホワイトソックス時代にワールドシリーズ優勝を果たしたことのある井口資仁(現ロッテ)がMLBで成功する内野手のタイプについて、「イレギュラーが多いから、逆シングルで捕るのも、ランニングスローも、当たり前にこなせないとやっていけない。中南米の選手はガタガタのグラウンドで小さい頃からやっているから、イレギュラーしても当たり前のようにさばく」と話していた環境を実感できた。

ドミニカでスポーツと言えば野球。至るところで、ストリートベースボールに興じる少年を見つけることができる(撮影:龍フェルケル

このストリートベースボールを楽しんでいる少年たちは、おそらく10歳くらいだろう。さらに奥にある砂利のスペースに別の少年たちが見えるので、近づいてみる。13歳くらいの少年たちが行っているのは、遊びの試合ではなく、ロングティー(トスで上げたボールを遠くへ打つトレーニング)だ。

ホームベース上でトスを上げているコーチに話を聞くと、非公式の代理人だという。ドミニカにはMLBの28球団がアカデミーを開いているが、彼らは16歳未満の選手との契約を認められておらず、非公式の代理人がそれより若い選手を発掘・育成しているのだ。そういった選手をプレーさせるためのリーグもあり、彼らがMLBと契約した場合、代理人は選手の家族からマージンを得る。

ちなみに、トスを上げていた代理人の報酬は契約料の10%。契約料は選手によって異なるが、元広島の投手で現在はドミニカのカープアカデミーでコーチを務めるフアン・フェリシアーノによると、「300万ドル(約2億7000万円)に達するケースもある」という。

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