貧困の国ドミニカで、野球が持つ大きな意味 大リーガーを続々輩出。ドミニカ流の”雑草”教育
ドミニカ共和国の首都サント・ドミンゴから車を東に1時間強走らせると、「世界で最も多くの野球選手を輩出している町」に到着する。
当地、サンペドロ・デ・マコリスは1998年のメジャーリーグ(MLB)でマーク・マグワイアとの本塁打王競争で野球ファンを熱狂させたサミー・ソーサや、日本のロッテでプレーした後にMLBで数々の最年長記録を打ち立てたフリオ・フランコらの出身地だ。
2005年の第1回ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)でドミニカを率い、ワシントン・ナショナルズやクリーブランド・インディアンスで監督経験のあるマニー・アクタもこの地から育っている。
アクタには現在、こんな口癖がある。
「教育を受けた者には、明日がやって来る」
当然、教育は野球選手にとっても欠かせないものだ。
オランダに喫した国辱の敗戦
4年前の2009年、第2回WBCで優勝候補に挙げられたドミニカは、第1ラウンドで屈辱的に敗れ去った。当時を思い返すと、地元紙『リスティン・ディアリオ』で働くエクトル・クルス記者は今でも胸がつかえそうになるという。
「わが国はどこの国に負けた? オランダだよ。国辱だ。侮辱的な敗戦だった」
ドミニカは第1ラウンドの初戦で、格下のオランダに3対2で敗戦。その3日後に第2ラウンド進出を懸けて再戦したが、延長11回にサヨナラ負けを喫した。
オランダに敗れ去った裏では、ドミニカ人の抱える欠点が露呈した。クルス記者が言う。
「ドミニカ人の多くは高レベルの教育を受けていないから、責任感が欠けている。前回の代表チームには規律がなさすぎた。実は、敗戦の裏にはこんなスキャンダルがあった。オランダ戦の前日、2人の投手と1人の野手が監督の許可なく宿舎を抜け出した。当時の監督は、ドミニカで『野球の神様』と言われるフェリペ・アルー。その監督の許可なしにパーティーへ繰り出し、一晩明かしてまったく寝ずにチームへ戻ってきた。その後、オランダに国辱の敗戦を喫したんだよ!」
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