貧困の国ドミニカで、野球が持つ大きな意味 大リーガーを続々輩出。ドミニカ流の”雑草”教育

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規律の欠如――。

ドミニカで野球関係者と話すたびに、何度も耳にしたフレーズだ。貧困問題の根深いこの国には学校に通えない子どもが少なからず存在し、そのために集団生活に慣れておらず、自分を律することも難しい。教育を満足に受けていない影響は、野球にも多分にあるという。

そんなドミニカ人に規律を植え付けるため、当地にあるMLBのアカデミーではさまざまな取り組みが行われている。たとえばインディアンスのアカデミーでは、毎朝、ドリル方式でいくつかの走塁メニューを反復練習させる。ホセ・メヒア監督がその目的を説明する。

「ラテンの選手たちは野球のトレーニングをした経験が少ないので、こういうドリル練習が役に立つ。繰り返してやることで、体にしみ付かせていくんだ」

中日の浅尾拓也はドミニカのウインターリーグに参加したことがあり、日本でもチームメイトとしてドミニカ人選手たちとプレーした経験を持つ。浅尾はドミニカ人選手の特長について「身体能力が高い」と話していた。

たとえば2008年に中日へ入団したマキシモ・ネルソンは来日当初、ノックのボールをまともに取れないほど守備が拙かったものの、日本で鍛えられ、10年には10勝を飾るまでになった。ドミニカ人はプロに入る前に指導らしい指導を受けることが少なく、基礎を欠いているが、磨けば光り輝く可能性=身体能力を持っているのだ。

英語、アメリカ文化、規律をたたき込む

2月11日、ナハージョにあるサンディエゴ・パドレスのアカデミーを訪れると、全体練習の後、投手コーチのジャスティン・ケサダが一人の若手右腕投手にシャドーピッチング(鏡を見ながら行う投球フォームのチェック)を繰り返させていた。左肩の開きが早い点を修正している。

ドミニカ人のケサダコーチは「我々には野球への誇りがある。それがパワー、スピードという身体的な強さを引き出すんだ」と胸を張る(撮影:龍フェルケル

ケサダが言う。

「ピッチャーにとって最も重要なのはメカニック(投球フォームにおける一連の動作)。最高のメカニックを習得すれば、スピード、コントロールがよくなる。よいメカニックがなければ、ケガをするリスクがつきまとうしね。だから継続して教えている。ストライクを取り、配球を考えることもメカニックがなければできない」

規律を覚えさせる方法は、野球だけではない。インディアンスのアカデミーでは英語、スペイン語、アメリカ文化の授業がそれぞれ週に1度行われている。その目的についてメヒア監督はこう話す。

「ここのプログラムを信じ、ルーティンワークとして続けていくことが規律を覚える第一歩だ。野球は繰り返しのスポーツだから、規律が大事。英語や文化の授業もその一環だ。『ここで規律を学べば、アメリカでもすぐに適応できる』と話せば、選手もちゃんとやる。すべては野球選手として成功するためだ」

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